2026.03.30 活動内容

「開発途上国支援プロジェクト」——バングラデシュでグリーンアライアンスが紡ぐ3つの未来(2025年度活動報告)

日本の住宅用太陽光発電から生まれた環境価値が、バングラデシュ南西部沿岸でマングローブの再生につながっています。
本プロジェクトは、韓国の環境専門公益財団「環境財団」と共に、バングラデシュの現地政府機関とも協力しながら、気候変動の影響を受けやすい地域で、防災・生態系回復・暮らしの安定を同時に生み出しています。この取り組みは、現地住民とともに進める共生のプロジェクトです。
日本の家庭から生まれたクリーンエネルギーが国境を越えて人と地域をつなぎ、持続可能な未来の防災林として育ち始めています。

2025年度の主な成果

日本で消費者の皆さんが日常生活で再生可能エネルギーを選ぶこと。この行動が、バングラデシュのブルーカーボンとなり、沿岸地域の防災や暮らしを支える基盤につながっています。2025年度はこの構造が明確な形となり、植林面積の拡大、防災力の向上、住民の雇用創出という3つの価値が大きく前進した一年でした。

グリーンアライアンスは環境貢献への取り組みである「グリーンアクション」の一環として、バングラデシュ南西部・シュンドルボン沿岸のマングローブ植林地を拡大しました。現地住民と共に、既存の1.5 haに新たな2 haを加えて合計3.5 haを確保しました。そこに9,200本の苗木を植えました。

バングラデシュの現地に立つプロジェクト標識。日本・韓国・バングラデシュ、3つの国と組織が、この場所で森を育てています

2024年度からの累計は約1.6万本で、活着率は80%を達成しました。
気候災害に脆弱な沿岸地域で、防災力向上・生態系回復・雇用創出のモデルを構築しています。
前年度(2024年度)の活動報告はこちら:https://greenalliancejp.com/magazine/1082/
2025年度のハンファジャパンプレスリリースはこちら:https://www.hanwha-japan.com/news/2026/260226/

住宅用太陽光の環境価値をブルーカーボンの森へ還元

シュンドルボンは、世界最大のマングローブ森林地帯として知られています。しかし、過去20年間でその面積は半減しました。気候変動の影響を最も強く受ける国の一つであるバングラデシュでは、マングローブ森林の再生が急務となっています。

本プロジェクトは、グリーンアライアンスを主宰するハンファジャパン製の家庭用太陽光発電によるCO₂削減量をJ-クレジット化し、その一部を現地の植林活動に活用しています。

3.5haのマングローブは陸上林比3〜5倍の炭素貯蔵能力を持ち、IPCC基準に基づく試算では、今後20年で約18,176トンを吸収します。

防災と共存のレジリエンス向上

2025年度の植林により、シュンドルボン沿岸地域の防災力が向上しました。バングラデシュ沿岸部ではサイクロンや高潮による被害が深刻です。マングローブの根は波のエネルギーを効果的に吸収し、土壌流出を防ぎます。2025年度に新たに形成した3.5haのマングローブ林は、高潮の進行を遅らせ、住民が安全に避難を始められる条件を整えます。

一本一本、丁寧に。住民の手で植えられた苗木が、シュンドルボンの防災林へと育っていきます

エコガード発足で雇用を創出

植林地の維持管理を担うエコガード(沿岸保全)チームが2025年度に発足しました。メンバーは20名で、半数は女性です。苗木の手入れ、フェンスの修理、蜂の巣箱設置などの作業を継続的に行い、植林地を地域で維持する仕組みを支えています。新たに生まれた雇用は、平時の保全に加え、サイクロン時の避難誘導も担っています。

ソーシャルマッピングでつくる、住民主体の共生ルール

住民同士の対話から生まれる共生のルール。森を守りながら生計を維持する仕組みを、地域の声をもとに作り上げました

現地労働組合とソーシャルマッピングで漁業・放牧エリアを調整しました。牛除けフェンスも設置しました。
住民45名に環境教育4回、技術者15名に研修3回を実施しました。住民52名が植林に参加し、森と漁業や牧畜との両立を図り、約250名が本プロジェクトの恩恵を受けています。

森と暮らしが共存する運用の仕組み

植林や環境教育にとどまらず、森と人々の日常が共存できる仕組みを住民と共に作りました。
まず、土地利用の調整を目的としたソーシャルマッピングを実施、地域の労働組合と協力して持続可能な森林利用ルールを整えました。

具体的には、漁師のボート停泊場所や漁業エリア、牧草地など、住民の生活動線を地図に落とし込み、森を育てる場所と人々が暮らす場所を調整することで、無理のない植林計画のもと、森と暮らしが無理なく共存できる環境を整えました。
さらに、牛が植林地に入らないようフェンスを設置。マングローブが安定して育つ環境を整備し、牧畜を続ける住民の生活も守る持続可能な共存の仕組みを実現しました。

教育・協働で支える持続性

2025年は、現地住民45名を対象に環境教育を4回、技術者15名には植林・管理の研修を3回実施しました。マングローブの大切さを伝え、自分たちで守り育てる方法を学ぶ機会を提供しました。

共に歩んだ2年間

本プロジェクトを共に推進してきた環境財団の担当者に、パートナーの視点から2年間の活動を振り返ってもらいました。

■環境財団 グリーンCSRセンター 炭素ゼロチーム シニアマネージャー ク・ユンミ氏
2025年度の活動内容・成果への受け止め

グリーンアライアンスとの協働は2024年に始まり、2025年は2年目として安定的に事業を推進することができました。2024年に造成したスータルカリ・ユニオン(Sutarkhali union)では土壌侵食が深刻だったため、復元効果をさらに高めるべく2025年にも1,000本を追加補植しました。単なる植樹にとどまらず、苗木の定着率と生存率の管理を重視した戦略的な取り組みです。

新たにバジュア・ユニオン(Bajua union、2ha)でも地域コミュニティと協力しながら8,200本を植樹し、復元面積を拡大しました。2年間の累計では、3.5haの用地に計1.6万本を植樹したことになります。開発途上国で若い苗木が育っていく過程は、地域の持続可能な生活基盤を築くことにも直結します。一本一本が、将来の経済的・環境的・社会的変化を生み出す礎となるでしょう。

今後の課題は、5年・10年にわたって安定した成長を支える体系的な管理とモニタリングの継続です。現地住民への継続的な教育、フェンス管理、家畜の放牧の最小化など、コミュニティを基盤とした保護体制の強化が鍵となります。

グリーンアライアンスへの評価

グリーンアライアンスは、家庭用太陽光発電によるCO2削減量をJ-クレジットとして創出し、その収益の一部をマングローブ植林に再投資するという有機的な循環モデルを構築しています。

気候変動の緩和と生態系の復元を結びつけるこの仕組みは、SDGsの観点からも高い整合性を持ちます。地域社会を中心に据えた事業推進は、環境改善にとどまらず、地域ベースのレジリエンス強化においても大きな意義を持っています。地域との信頼関係を土台に、生態系の復元から住民の生活環境の改善までを包含する、より包括的なインパクトの創出を期待しています。

この2年間で感じた大きな変化

最も顕著な変化は、堆積物の蓄積が目に見えて進んだことです。マングローブの根の構造が土砂を捕捉することで、川の内側の地盤が外側と比べて徐々に高くなっていることが確認されています。形成されたマングローブの緩衝帯が波や潮の氾濫を和らげ、周辺の居住地域をより安定的に守るようになりました。地域の環境的安定性が向上し、気候災害へのレジリエンスも着実に強化されています。

根付く森、変わる暮らし。現地からの声

シュンドルボン沿岸で、漁を営み、森の成長を見守り、地域を支える方々に、日々の生活の中で感じる変化を聞きました。

■漁師 ラシッド・ガジ氏

川での漁業と小規模な養魚を営むラシッド・ガジ氏は、植林による川の前向きな変化を感じています。堆積物の蓄積が進み、川の内側の地盤が徐々に高くなることで、「養魚池や堤防が侵食や損傷から守られるようになった」と語りました。マングローブが川沿いに暮らす人々の住居と生計を守るだけでなく、地域全体の環境レジリエンスを強化すると強調しています。

■エコガード / 漁師 マルフ・ガジ氏

漁師としての生計を立てながら、エコガードとして植林地の維持管理にも携わるガジ氏。地域では「マングローブ・ヒーロー」として知られています。植林後、川の内側の地盤が外側と比べて約2フィート高くなるなど、堆積物の増加が目に見える形で現れていると言います。

堤防が波の被害から守られるようになり、河岸侵食に対して以前よりも安全に感じるようになりました。また、鳥類や水生生物の生息環境が豊かになったことも実感しており、マングローブ植林は環境保護にとって非常に重要な取り組みだと話しています。

■エコガード コビタ・モンドル氏

農業と植林地の保護活動で生計を立てるエコガードのモンドル氏。かつて密林だったこの地域は人間のさまざまな活動によって一部が失われましたが、「適切に植林を続ければ、再び以前の森に戻れる可能性がある」と考えています。堤防の建設の際、土の掘削により河岸の森林が大きく損傷した経緯があり、現在は回復に向けた努力を続けています。

「洪水が起きても、マングローブが水の圧力や流れを弱めてくれる」とその恩恵を実感しており、植林活動への参加が家族の生活を支える収入にもなっています。マングローブの価値がまだ十分に理解されていないことを課題と感じており、住民に「草を刈るときも苗木を傷つけないように」と呼びかけながら啓発活動を続けています。

■ボランティア シャンパ・ジョアルダール氏

マングローブ保全と環境意識の向上に取り組む地域ボランティアのジョアルダール氏。以前はこの地域の川岸にマングローブがなく、波や高潮で堤防が頻繁に損傷し、住民が大きな困難を抱えていたと振り返ります。しかし、「植林後、マングローブが自然の防護壁として機能し、波の力が弱まったことで、堤防の損傷問題は大きく改善されました」と語ります。

さらに、成長するマングローブの景観が地域外からの訪問者を引き寄せ始めており、エコツーリズムや地域主体の経済活動の可能性も生まれていると言います。将来的には、マングローブティーやピクルスなどの関連製品を通じた新たな収入機会への期待も口にしており、「継続的な植林と住民参加が、環境保護・生計向上・持続可能な地域発展のためには不可欠」と訴えています。

持続可能な歩みを、皆様とともに

■グリーンアライアンス事務局 代表
ハンファジャパン株式会社
エナジーソリューション事業部 執行役員 事業部長
李泰基氏

本活動は、グリーンアライアンス発足以前より、外資系企業である当社がグローバルな視点でのSDGs貢献活動として、パートナー企業の皆様へご提案してきた取り組みです。

2年目を迎えた今期は、日本のお施主様にも「コト体験」としてご参加いただけるよう、住宅1棟につき1本の植樹を行う形へと発展させ、継続して取り組んでおります。

植林地は遠く離れたバングラデシュにあり、苗木が林へと成長するまでには約8年の歳月を要します。こうした長期的な取り組みは、私たちの社会貢献活動に対する想い――広い視野を持ち、時間をかけて持続していく姿勢――とも重なるものです。

今後もグリーンアライアンスは、パートナー企業の皆様および日本の皆様とともに、バングラデシュにおけるマングローブ植林を通じた環境保全の歩みを、長い年月をかけて見守り続けてまいります。

本プロジェクトは、環境を守ることと人の暮らしを支えることを、ひとつの線でつなぐ活動です。
2025年、シュンドルボンに芽吹いた新たなマングローブは、これからの10年、現地住民とともに大きな防災林として育っていきます。CO2吸収、防災、地域活性という3つの価値を、この地域に届けることができました。

これからもグリーンアライアンスは、多様な社会課題の解決に取り組んでいきます。

グリーンアライアンス事務局

〒108-0014
東京都港区芝4丁目10番1号 ハンファビル