電気をつける、スマホを充電する、エアコンをかける。毎日何気なく使っている電気が、どこからきているか考えたことはあるでしょうか。実は今、日本の電気のかなりの部分が、太陽光や水力など「再生可能エネルギー」でまかなわれています。種類は7つ以上あり、それぞれ仕組みも、得意な地域も、課題もまったく異なります。
太陽光と風力は何が違うのか。地熱発電はなぜ日本向きなのに普及していないのか――この記事では、そうした素朴な疑問に一つひとつ答えていきます。
【この記事の結論】
再生可能エネルギーには太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど7種類以上があり、それぞれ仕組みや得意な地域が異なります。2024年時点で日本の発電量の約26.7%を占め、2040年には4〜5割を目指しています。種類ごとの特徴を知ることが、エネルギーを「自分ごと」として考える第一歩です。
第1章 再生可能エネルギーとは?化石燃料との違いをやさしく解説
再生可能エネルギーとは、自然界のサイクルの中で繰り返し補充されるエネルギーのことです。太陽の光、風、水の流れ、地球内部の熱など、使い続けても枯渇しないのが最大の特徴です。2024年度時点で、日本の電気の約4分の1強は、こうした再生可能エネルギーでまかなわれています(※1)。
対して、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料は、地中に何億年もかけて蓄積されたものです。一度使えば二度と戻りません。燃やすときに大量のCO₂を排出するため、地球温暖化の主な原因ともなっています。
日本は化石燃料の大部分を輸入に頼っており、エネルギー自給率はわずか12.6%(2022年度)です(※2)。再生可能エネルギーの普及は、環境対策だけでなく、国のエネルギー安全保障という観点からも急務といえます。
※1出典:ISEP|国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)(2025年10月31日)
※2出典:経済産業省 資源エネルギー庁|令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績(速報)
第2章 再生可能エネルギーの種類一覧(5種類+α)
再生可能エネルギーには、発電に使うものと熱利用に使うものがあります。日本の再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)では、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5種類を中心に定めています。ここでは熱利用系も含めて一覧で紹介します。
2-1 太陽光発電
太陽光発電は、太陽の光をシリコンなどの半導体でできたパネルに当て、直接電気に変換する発電方式です。
住宅の屋根から大規模なメガソーラーまで、設置場所を選ばない柔軟さが最大の強みです。2024年度の日本における発電比率は11.5%で(※1)、再生可能エネルギーの中で最も高い割合を占めています。一方、夜間や曇りの日は発電できず、天候に左右されやすい点が課題です。蓄電池と組み合わせることで、この弱点をある程度カバーできます。
向いている地域:日照時間が長い太平洋側全般。四国・九州は特に発電効率が高い傾向があります。
2-2 風力発電
風力発電は、風の力で風車(ブレード)を回し、その回転エネルギーを電気に変換します。太陽光と異なり、夜間でも発電できる点が特徴です。日本の2024年度の発電比率は1.2%にとどまっていますが(※1)、累積導入量は約584万kW(2024年12月末時点)まで拡大しています(※2)。洋上風力の本格普及が進めば、この数字は大きく伸びる見込みです。風が安定して吹く地域でないと効率が下がること、また建設時の騒音や景観への影響が課題として挙げられます。
向いている地域:北海道・東北・九州など風況の良いエリア。沿岸部や山の稜線も適しています。
2-3 水力発電
水力発電は、川の流れやダムに貯めた水を高いところから低いところへ落とし、その勢いでタービンを回して発電します。再生可能エネルギーの中では最も歴史が長く、技術的な信頼性も高い方式です。天候に左右されず安定して発電できる点が大きな強みで、2024年度の発電比率は7.6%と、太陽光に次ぐ規模を誇ります(※1)。大規模なダム建設は自然環境への影響が大きいため、近年は川の流れをそのまま利用する「小水力発電」が注目されています。
向いている地域: 山間部が多く河川に恵まれた地域全般。中部・東北地方が特に多く導入されています。
2-4 地熱発電
地熱発電は、地下深くのマグマで熱せられた蒸気や熱水を取り出し、タービンを回して発電します。天候にも時間帯にも左右されない、安定したベースロード電源として期待されています。日本は火山国であり、地熱資源量は世界第3位とされています(※3)。しかし2024年度の発電比率はわずか0.3%(※1)。国立公園内に良質な資源が集中しており、開発規制がネックになっているためです。
向いている地域: 北海道・東北・九州など火山が多いエリア。大分県・鹿児島県は国内の地熱発電の大半を担っています。
2-5 バイオマス発電
バイオマス発電は、木材・農業残渣・食品廃棄物・家畜の排泄物など、生物由来の有機物(バイオマス)を燃料にして発電します。燃焼時にCO₂が発生しますが、持続可能な形で調達された植物由来燃料などについては、成長過程で吸収したCO₂との関係から、カーボンニュートラルに近い発電方式とされています。2024年度の発電比率は6.0%です(※1)。燃料の調達・輸送コストがかかること、燃料の安定確保が難しいケースがある点が課題となっています。
向いている地域: 林業や農業が盛んな地域。木材の端材や間伐材を活用できる山間部での導入が進んでいます。
2-6 太陽熱・地中熱・雪氷熱など(熱利用系)
発電ではなく「熱」として直接エネルギーを活用する方式もあります。
- 太陽熱利用:太陽の熱を集めてお湯を沸かしたり、暖房に使う方法で、太陽光発電より変換効率が高いという特徴があります。
- 地中熱利用:地下数メートルの比較的安定した温度を冷暖房に活用する方法で、ヒートポンプと組み合わせて使われることが多くあります。
- 雪氷熱利用:冬に貯めた雪や氷を夏の冷房に利用する方法で、北海道などで実用化が進んでいます。
これらは発電量には計上されませんが、電力消費を減らす省エネ効果が大きく、再エネ普及の一翼を担っています。
※1出典:ISEP|国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)(2025年10月31日)
※2出典:日本風力発電協会(JWPA)|2024年12月末時点日本の風力発電の累積導入量
※3出典:JOGMEC|世界の地熱発電
第3章 再生可能エネルギーのメリット・デメリット
再生可能エネルギーと聞くと「環境に優しい」というイメージが強いですが、実際にはメリットだけでなく、無視できないデメリットもあります。種類を選ぶ際の判断材料として整理しておきましょう。
最大のメリットは、太陽・風・水・地熱が自然によって絶えず補充されるため、使い続けても枯渇しないことです。発電時の温室効果ガス排出量も化石燃料に比べて圧倒的に少なく、発電時のCO₂排出はほぼありません。さらに国内で生産できるためエネルギー自給率の向上につながり、設置や維持管理の仕事が地元に生まれることで地域経済への貢献も期待できます。
一方で、太陽光や風力は天候や時間帯に発電量が左右されやすく、安定供給のためには蓄電池や送電網の整備が欠かせません。設備投資の初期コストが大きく、回収に時間がかかる点も悩ましいところです。加えて、広い土地や特定の地形といった設置場所の制約があり、大規模な開発では生態系や景観への影響が問題になることもあります。
種類によってメリット・デメリットは異なるため、下の表で比較してみてください。
| 再エネ種類 | 安定性 | コスト | 設置のしやすさ | CO₂排出 |
|---|---|---|---|---|
| 太陽光 | △天候依存 | 中(低下傾向) | ◎ | ◎ほぼゼロ |
| 風力 | △風況依存 | 中〜高 | △場所を選ぶ | ◎ほぼゼロ |
| 水力 | ◎安定 | 高(初期) | △地形が必要 | ◎ほぼゼロ |
| 地熱 | ◎安定 | 高 | △規制あり | ◎ほぼゼロ |
| バイオマス | ○比較的安定 | 中(燃料費) | ○ | △燃焼あり |
第4章 日本の普及状況と私たちの暮らしへの影響
再生可能エネルギーは、いまどれくらい日本の電気をまかなっているのでしょうか。2024年度時点での割合は約26.5%で、内訳は次の通りです(※1)。
| 再エネ種類 | 発電比率(2024年度) |
|---|---|
| 太陽光 | 11.5% |
| 水力 | 7.6% |
| バイオマス | 6.0% |
| 風力 | 1.2% |
| 地熱 | 0.3% |
| 合計 | 約26.5% |
10年前の再エネ比率は約10%台だったことを考えると、急速に拡大しているといえます。ただ世界と比べるとまだ差があり、ドイツでは2024年の年間太陽光導入量が15GWに達したのに対し、日本は約2.5GWにとどまっています(※1)。
日本政府は2040年度に再エネ比率を4〜5割にする目標を掲げており(※2)、現状の26.5%からさらに15〜25ポイントの上乗せが必要です。これを達成するには、太陽光・洋上風力の大幅な拡大と、蓄電池や送電網の整備が欠かせません。
再生可能エネルギーの拡大は、電気代にも影響します。電気料金に含まれる「再エネ賦課金」は、FIT制度によって再エネ発電事業者に支払われる費用の一部を、電気を使う人全員で負担する仕組みです。一方で自宅に太陽光パネルを設置すれば、昼間の電気代をほぼゼロにできるケースもあります。再エネは社会全体の話であると同時に、家計に直結するテーマでもあるのです。
※1出典:ISEP|国内の2024年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報)(2025年10月31日)
※2出典:経済産業省 資源エネルギー庁|今後の再生可能エネルギー政策について(2025年6月3日)
第5章 日本が抱える再生可能エネルギーの3つの課題
再生可能エネルギーの普及は着実に進んでいますが、その裏には構造的な課題が3つあります。
5-1 送電網の整備が追いついていない
太陽光や風力が多い北海道・東北では、発電量が需要を上回り、余った電気を捨てざるを得ない「出力制御」が頻発しています。九州では2024年度、発電量の4.4%がこの出力制御によって抑制されました(※)。電気を全国に効率よく送るには送電線の増強と系統の柔軟化が必要ですが、巨額の費用と長い時間がかかるのが実情です。
5-2 発電コストが世界平均より高い
世界では太陽光の発電コストが急速に下がり、条件によっては化石燃料より安い水準に達している地域もあります。しかし日本のコストは世界平均より依然として高く、普及のスピードを鈍らせる一因になっています。土地の確保コスト、工事費の高さ、規制対応など、日本独自の要因が複合的に絡んでいるためです。
5-3 地熱開発の規制問題
世界第3位の地熱資源を持ちながら、日本の地熱発電は0.3%にとどまっています。最大の理由は、国立公園内に良質な資源が集中していることです。2012年以降、一定の条件のもとで国立公園内での地熱開発が認められるようになりましたが、地域住民や温泉事業者との調整など、実際の開発には多くのハードルが残っています。
※出典:ISEP|2024年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)
第6章 今後注目される再生可能エネルギーの新技術
6-1 洋上風力発電
陸上ではなく海の上に風車を設置する洋上風力発電は、日本の再エネ拡大の切り札として期待されています。海上は風が強く安定しているため、陸上より大きな風車を設置できるのが強みです。日本政府は2040年までに洋上風力の導入量を3,000〜4,500万kWにする目標を設定しており(※1)、現在は秋田・千葉・長崎などで大規模プロジェクトが進行中です。
6-2 ペロブスカイト太陽電池
従来のシリコン系太陽電池に代わる次世代技術として注目されているのが、ペロブスカイト太陽電池です。フィルム状に薄く製造できるため、曲げたり壁面に貼ったりすることが可能で、ビルの外壁や窓など、これまで設置が難しかった場所にも展開できます。日本は関連特許の出願シェアで世界トップの約3割を占めており(※2)、官民一体での開発が加速しています。2030年代の実用化が期待されています。
※1出典:経済産業省 資源エネルギー庁|洋上風力産業ビジョン(第1次)(2020年12月15日)
※2出典:特許庁|令和6年度特許出願技術動向調査 ペロブスカイト太陽電池関連技術(2025年7月24日)
第7章 よくある質問(FAQ)
Q1. 再生可能エネルギーと自然エネルギーは同じですか?
A.ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には少し異なります。「再生可能エネルギー」は法律上の定義を持つ用語で、自然界で繰り返し補充されるエネルギーを指します。一方「自然エネルギー」はより広い意味で使われる通称で、法的な定義はありません。日常会話では同義として扱って問題ありません。
Q2. 再エネ賦課金とは何ですか?電気代にどう影響しますか?
A.再エネ賦課金は、FIT制度(固定価格買取制度)のもとで再エネ発電事業者に支払われる費用の一部を、電気を使う全員が電気代に上乗せして負担する仕組みです。2024年度の単価は1kWhあたり3.49円で、月400kWh使う家庭では月約1,400円の負担になります(※1)。
Q3. 日本の再エネ比率は世界と比べて高いですか、低いですか?
A.低い水準です。2024年度の日本の再エネ比率は約26.5%ですが、ドイツでは57.4%、デンマークでは88%に達しています(※2)。日本は島国で送電網が国をまたいでいないため、余剰電力の融通が難しく、普及スピードが遅れてきました。
Q4. 家庭で再生可能エネルギーを使う方法はありますか?
A.いくつか方法があります。自宅に太陽光パネルを設置して自家発電する、再エネ由来の電力を供給する電力会社のプランに切り替える、太陽熱温水器や地中熱ヒートポンプを導入する、といった選択肢です。なかでも電力プランの切り替えは初期費用がかからず、今すぐ始められます。
Q5. 地熱発電は温泉に影響しますか?
A.地熱発電と温泉は地下水脈の深さが異なるケースが多く、必ずしも直接影響するわけではありません。ただし地域によっては同じ地下資源を共有している場合もあり、現在は地元の温泉事業者や住民との協議を経て開発を進めるルールが整備されています。
Q6. 再生可能エネルギーは本当に環境にやさしいですか?
A.発電時のCO₂排出はほぼゼロですが、設備の製造・設置・廃棄の過程では一定のエネルギーと資源を消費します。特に太陽光パネルの廃棄問題は「2040年問題」として議論されています(※3)。ただしライフサイクル全体で見ても化石燃料と比べてCO₂排出量は大幅に少なく、環境負荷は低いといえます。
※1出典:ISEP|2024年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)
※2出典:経済産業省|再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します(2024年3月19日)
※3出典:経済産業省 資源エネルギー庁|2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題
第8章 まとめ
再生可能エネルギーには、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスを中心に7種類以上の方式があり、それぞれ仕組みや向いている地域、メリット・デメリットが異なります。
2024年度時点で日本の発電量の約26.5%を再エネが占め、2040年には4〜5割を目指しています。送電網の整備や発電コストといった課題は残るものの、洋上風力やペロブスカイト太陽電池など新技術の普及によって状況は変わりつつあります。
再生可能エネルギーは「環境のための話」にとどまりません。電気代、エネルギー自給率、地域の雇用など、私たちの暮らしに直結するテーマです。まずは種類と特徴を知ることが、エネルギーを「自分ごと」として考える第一歩になります。
