「RE100」という言葉を耳にしたことはあっても、「具体的に何をする取り組みなのか」「自社にも関係あるのか」がよくわからないという方も多いはず。RE100は、企業が使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す、国際的な企業の集まりによる取り組みです。本記事では、RE100の基本的な仕組みから加盟条件、日本企業の参加状況、メリット・デメリットまでを解説します。
この記事でわかること
- RE100の基本的な仕組みと、企業が加盟するための条件
- 企業がRE100に参加するメリットと、コスト面などのハードル
- 日本企業の参加状況と、業界ごとの傾向
- RE100とSBT、カーボンニュートラルとの違い
第1章 RE100とは?基本の仕組みと加盟条件
RE100(アールイー・ヒャク)は、「Renewable Electricity 100%」を意味し、企業が事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的な企業イニシアチブです。原則として2040年までの達成が求められますが、一定の条件を満たす場合には2050年までの目標設定が認められることがあります。
1-1 RE100に加盟すると何をすることになる?基本の仕組み
RE100は「再エネを応援する」という緩やかな宣言ではなく、加盟した企業に具体的な行動を求める仕組みです。主なルールは次の3つです(※1)。
- 原則として2040年までに、使用電力の100%を再エネ化する目標を立てて公表すること(注:企業ごとの事情が認められる場合には、 2050年まで認められる例外もあります)
- 2040年までの100%化を目標とする場合は、2030年までに70%、2035年までに90%という中間目標も設定すること(2050年までの目標設定が例外的に認められる場合は、別の中間目標が設定されます)
- その目標を、原則としてグループ会社全体(親会社・子会社まとめて)に適用すること(注:親会社と明確に分離したブランドで、年間消費電力量が1TWh以上ある場合は、子会社単独での加盟が例外的に認められます)
「加盟=ゴールがすぐ達成される」わけではなく、あくまで期限付きの目標を掲げ、その進捗を毎年チェックされ続ける仕組みだという点がポイントです。
1-2 加盟のハードルは?なぜ日本企業だけ「50GWh」なのか
RE100に加盟するには、企業の規模に関する条件もクリアする必要があります。代表的なのが「年間の電力消費量が100GWh以上であること」という基準です。相当な規模の企業でないと参加できない条件ですが、実は日本企業だけこの数字が50GWhに引き下げられています(注:GWhは電力量の単位で、大規模工場や商業施設が1年間に使う電力量に近いイメージです)。
日本企業については、2020年から年間電力消費量の基準が50GWh以上に緩和されています。日本市場の事情を踏まえた特例ですが、具体的な加盟可否はRE100側が判断します(※1)。
なお、条件を満たせば誰でも入れるというわけではありません。化石燃料の推進や再エネ普及を妨げるロビー活動を行う企業、化石燃料・航空・軍需品・ギャンブル・たばこ産業のみを主な事業とする企業などは、RE100の参加対象外とされています(※2)。
また電力消費量が50GWh未満の中小企業や自治体などには、日本独自の受け皿として2019年に作られた2040年までの100%化を目標とする場合は、2030年までに70%、2035年までに90%という中間目標も設定すること(2050年までの目標設定が例外的に認められる場合は、別の中間目標が設定されます)「再エネ100宣言 RE Action」という枠組みもあります(※3)。
※1出典:環境省「RE100について」
※2出典:日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)「よくあるご質問(RE100について)」
※3出典:再エネ100宣言 RE Action「2020年度事業報告書」
第2章 なぜ今、企業にRE100が求められているのか
RE100への加盟は、以前は「余裕のある大企業が自主的に取り組む環境活動」というイメージがありました。しかし近年は、加盟していないこと自体がビジネス上のリスクになりかねない状況に変わりつつあります。
一つは、投資家からの圧力です。気候変動に関する情報開示を求めるCDPには、640以上の機関投資家が署名しており、運用資産の総額は127兆米ドルにのぼります(※1)。こうした投資家から企業の「脱炭素」への取り組みが評価されるなかで、RE100への加盟や再エネ調達の実績を公表することは、企業の姿勢を示す材料の一つになります。「環境に配慮している会社かどうか」が、投資判断に組み込まれる時代になっているわけです。
もう一つは、取引先からの要請です。大企業が自社の温室効果ガス排出量を減らそうとするとき、自社工場だけでなく、部品や原材料を仕入れる取引先(サプライチェーン)全体の排出量まで対象にする動きが広がっています。取引先が脱炭素対応を進めなければ、契約を継続してもらえなくなるリスクがある一方、先に対応しておくことで、取引先からの信頼向上や新たな受注拡大につながった事例も報告されています(※2)。
つまりRE100は、「環境にいいことをしている」というアピールのためだけの制度ではなく、投資家・取引先という2方向からの実利的な要請に応えるための手段になっている、という見方ができます。
※1出典:環境省「RE100について」
※2出典:The Climate Group「RE100 members are accelerating the energy transition in Japan」(2024年6月9日)
第3章 加盟数は世界トップ、でも中身は?日本企業の「意外な実態」(2026年最新)
日本企業のRE100加盟数について、最新のへぇな事実があります。2026年5月20日時点で、日本からは95社が加盟しており、これまで世界最多だったアメリカを抜いて、日本が世界1位になりました(※1)。世界全体では443社が加盟しているなか、日本は95社で、全体の2割以上を占めています。
一方で、加盟企業数の"多さ"と、実際の再エネ調達の"進み具合"は、必ずしも一致していません。RE100の2024年の年次開示報告によると、日本で活動するRE100加盟企業の再エネ電力利用率は36%で、世界平均の53%を下回っています(※2)。
「加盟企業の数は世界一なのに、実際の再エネ比率は世界平均を下回っている」——これは、日本で再エネを調達する際のコストや供給量、調達手段などに課題があることを示しています。 加盟すること自体はゴールではなく、あくまでスタートラインだということがよくわかるデータです。
※1出典:環境省「RE100について」
※2出典:The Climate Group「RE100 members are accelerating the energy transition in Japan」(2024年6月9日)
第4章 RE100に入るとどうなる?企業が得る4つのメリット
RE100に加盟する企業には、主に次の4つのメリットがあるとされています。
1つ目は、ESG投資を呼び込みやすくなることです。前章で触れた通り、機関投資家はCDPを通じて企業の再エネ調達状況を評価しています。そのため、RE100への加盟や再エネ調達の進捗を公表することは、自社の脱炭素への取り組みを投資家などに示す材料の一つになります(※1)。
2つ目は、取引先からの信頼維持・新規開拓です。サプライチェーン全体での脱炭素対応を求める大企業が増える中、先行して再エネ化に取り組むことは、既存の取引関係を守るだけでなく、新たな取引先との関係構築にもつながります(※2)。
3つ目は、化石燃料の価格変動リスクを避けられることです。再エネ電力は、化石燃料価格の変動による影響を受けにくいため、調達方法によっては長期的な電力コストの変動リスクを抑えられる可能性があります。
4つ目は、企業としての対外的な信頼度・ブランドイメージの向上です。世界的に認知度の高い国際イニシアチブに加盟していること自体が、消費者や取引先に対する一つの信頼の証になります。
※1出典:環境省「RE100について」
※2出典:日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)「サプライチェーンの脱炭素化を巡る動向」
第5章 「参加するだけ」じゃダメ?RE100加盟企業が直面する3つの壁
RE100は、加盟して終わりの制度ではありません。実際に取り組みを進める中で、多くの企業が直面する壁があります。
5-1 再エネ調達コストの壁
日本は海外に比べて再エネ発電設備の建設費用や土地コストが高く、同じ再エネでも調達コストが割高になりやすい状況にあります。また、PPAなど発電事業者と再エネの購入契約を結ぶ場合には、長期契約となるケースもあり、将来の事業見通しが不確実な中で長期間の契約を結ぶことが企業にとってハードルになる場合があります。
5-2 RE100の基準に沿った再エネ調達の壁
RE100は、再エネの調達方法を細かく規定しています。太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱などによる発電が再エネ電力として認められています。
そのなかで重要な考え方の一つが「追加性」です。これは、企業が再エネを調達することで、新たな再エネ発電設備の導入や発電量の増加につながるかどうかという考え方です。たとえば、すでに稼働している再エネ発電所の電力証書を購入するだけでなく、新しい発電設備の導入につながるPPAなどは、追加性のある調達方法といえます。
一方、再エネ電力証書(EAC)を購入する方法も、RE100で認められている調達手法の一つです。証書を含め、RE100の基準を満たす方法で再エネを調達することが重要です。
5-3 社内・事業への負担の壁
RE100の目標達成には、再エネ電力を調達するだけでなく、社内の各部門で再エネの利用状況を把握し、継続的に取り組みを進める必要があります。特に、複数の事業所や工場を持つ企業では、拠点ごとの電力使用量や契約状況を確認しながら、再エネへの切り替えを進めることが負担になる場合があります。
また、再エネ調達の方法によっては、既存の電力契約や設備、事業計画との調整が必要になることもあります。RE100は長期的な取り組みになるため、担当部署だけでなく、経営層や各部門を含めて社内で方針を共有し、継続して取り組める体制を整えなければならないのです。
第6章 RE100とSBT、カーボンニュートラル、何が違う?混同されがちな3つの脱炭素用語
「脱炭素系のアルファベット用語」は混同されがちですが、対象範囲がそれぞれ違います。
「RE100」は、企業が事業活動で使う「電力」に対象を絞り、その電力を100%再エネにすることを目指す取り組みです。
「SBT(Science Based Targets)」は、企業の温室効果ガス排出量について、パリ協定の目標と整合した削減目標を設定する取り組みです。Scope1・2に加え、企業の排出量に占めるScope3の割合など、一定の条件に応じてScope3についても削減目標を設定します(※1)。 SBTには中小企業向けの簡易コースも用意されており、大企業だけの制度ではありません(※2)。
これに対して「カーボンニュートラル」は、排出量から吸収・除去量を差し引いて実質ゼロを目指すという、より広い目標そのものを指す言葉です。RE100やSBTのような加盟団体・審査機関があるわけではなく、企業や自治体、国が「いつまでにカーボンニュートラルを達成する」と自ら表明(=カーボンニュートラル宣言)する形で進められます。対象とする範囲や目標の設定方法に幅があるため、宣言する主体によって内容が異なる場合がある点が、RE100・SBTとの大きな違いです。
つまり「RE100=電力」「SBT=サプライチェーン全体の排出量」「カーボンニュートラル=実質ゼロを目指す目標」と整理すると、混同しにくくなります。
※1出典:環境省「なぜ、企業版2度目標(SBT)/再エネ100%目標(RE100)なのか?」
※2出典:中小企業基盤整備機構「J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト」
第7章 よくある質問(FAQ)
Q1. RE100と「再エネ100宣言 RE Action」は何が違いますか?
A. RE100は原則として年間電力消費量50GWh以上の日本企業を対象とする国際イニシアチブです。50GWh未満でも、一定の条件を満たす企業は例外的に加盟できる場合があります。また、RE100の参加要件を満たさない中小企業や自治体、教育・医療機関などは、日本独自の枠組みである「再エネ100宣言 RE Action」に参加することができます。
Q2. 中小企業でもRE100に近い取り組みはできますか?
A. RE100そのものへの加盟は電力消費量の条件で難しくても、前述のRE Actionや、SBTの中小企業向けコースなど、規模に応じた選択肢が用意されています。
Q3. 日本はRE100加盟数で本当に世界一なのですか?
A. はい。2026年5月20日時点の環境省資料によると、日本は95社が加盟しており、これまで世界最多だったアメリカを抜いて世界1位になっています。
Q4. RE100に加盟すれば、その企業はもう再エネ100%を達成しているのですか?
A. いいえ、加盟時点ではまだ目標を「掲げた」だけの段階という企業もあります。RE100加盟企業は、それぞれ設定した目標年に向けて再エネ調達を進め、毎年その進捗を報告します。
第8章 まとめ
RE100は、企業が使用電力を100%再エネに切り替えることを目指す国際的な取り組みで、日本企業だけ加盟条件が緩和されているなど、意外と国ごとの事情に合わせた柔軟さを持つ制度です。
2026年5月時点で日本のRE100加盟企業は95社となり、加盟企業数では世界1位となっています。一方、2024年の日本におけるRE100加盟企業の再エネ電力利用率は36%で、世界平均の53%を下回っており、加盟後の再エネ調達にも課題が残されています。
SBTやカーボンニュートラルとの違いを整理しつつ、自社の規模や状況に合った関わり方を検討してみてください。



