「砂漠化」と聞くと、遠い国の自然現象だと感じる方も多いでしょう。しかしその原因は、気候の変動だけでなく、私たちの暮らしとも間接的につながる人間活動が大きく関わっています。この記事では、砂漠化がなぜ起こるのか、そしてなぜ一度始まると止まりにくいのかを、最新のデータをもとに整理しました。
【この記事でわかること】
- ・砂漠化を引き起こす2つの原因と、その仕組み
- ・砂漠化が止まらない悪循環のメカニズム
- ・干ばつと砂漠化の違い
- ・日本との関わりと、私たちにできること
第1章 砂漠化とは?世界の乾燥地の現状
砂漠化とは、乾燥地域を中心に、土地がもともと持っていた生産力を失っていく現象を指します。まずは定義と、世界における規模感から見ていきましょう。
砂漠化対処条約(UNCCD)は、砂漠化を「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域における、気候の変動及び人間活動を含む種々の要因による土地の劣化」と定義しています(※1)。
乾燥地(乾燥地域・半乾燥地域・乾燥半湿潤地域など)は地球の陸地面積のおよそ41%を占め、そこで世界人口の約3分の1にあたる20億人以上が暮らしています(※1,2)。極端に乾燥した砂漠を除く乾燥地に限っても、その約7割、約36億ヘクタールがすでに劣化しているという報告もあります(※1)。これは日本の国土面積(約3,780万ヘクタール)のおよそ95個分に相当する広さです。すでにそれだけの土地が、本来の生産力を失っているということになります。
※1出典:環境省|国際的な砂漠化対処
※2出典:IPCC『Climate Change and Land』特別報告書
第2章 砂漠化の原因は2つ|気候的要因と人為的要因
砂漠化を引き起こす要因は、大きく「気候的要因」と「人為的要因」の2つに分けられます。
2-1 気候的要因
干ばつや降水量の減少、気候変動による乾燥化など、気候や自然環境の変化によって引き起こされるものです(※1)。特に乾燥地では温暖化が世界平均より速く進んでおり、乾燥が進みやすい環境になっています(※2)。
2-2 人為的要因
過放牧や過耕作、不適切な灌漑による塩害、森林の減少、都市開発や鉱山開発など、人間の活動によって引き起こされるものです(※1)。こうした土地の利用が過度になると、乾燥地の生態系が持つ回復力を超えて土地が劣化し、砂漠化につながることがあります。
また、過放牧や過耕作などの背景には、人口増加や貧困、消費需要の拡大といった社会経済的な要因もあります。こうした要因が重なることで、土地にかかる負荷がさらに大きくなります(※1)。
※1出典:環境省|国際的な砂漠化対処
※2出典:IPCC『Climate Change and Land』特別報告書
第3章 砂漠化はなぜ止まらないのか|悪循環のメカニズム
砂漠化が厄介なのは、一度始まるとなかなか止めにくい点です。その背景には、土地の劣化と貧困などが絡み合う悪循環があります。
土地が劣化すると、作物の収穫量が減り、農家の収入も減っていきます。生活を維持するために、残された土地でさらに耕作や放牧を続けざるを得なくなり、その結果、土地の劣化がさらに進むという悪循環に陥ります。
この悪循環は、貧困や人口増加によってさらに強まります(※1)。人口が増えるほど限られた土地にかかる負荷は大きくなり、貧困のなかでは、土地の利用を減らしたり、別の収入源を確保したりすることも難しくなります。
さらに、気候変動も砂漠化を悪化させる要因の一つです。干ばつや豪雨などの異常気象によって土地の状態が悪化すると、砂漠化の進行がさらに加速することがあります(※2)。また、乾燥地では温暖化が世界平均より速く進んでおり、こうした気候変動が砂漠化の進行に影響を与えることも懸念されています(※3)。
※1出典:環境省|国際的な砂漠化対処
※2出典:UNEP|SDG指標15.3.1関連資料
※3出典:IPCC『Climate Change and Land』特別報告書
第4章 砂漠化と干ばつの違い
は、しばしば同じ意味で使われがちですが、実際には異なる現象です。
干ばつは、雨の少ない状態が一時的に続く自然現象です。数か月から数年で終わることが多く、雨が降れば土地の状態はおおむね回復します。
一方の砂漠化は、土地そのものの生産力が失われる、長期的かつ不可逆的な変化を指します(※1)。干ばつが引き金になることはあっても、いったん土地が劣化してしまうと、雨が降っただけで元に戻るようなことはありません。
両者の違いを整理すると、以下のようになります。
| 干ばつ | 砂漠化 | |
|---|---|---|
| 性質 | 一時的な気象現象 | 長期的な土地劣化 |
| 継続期間 | 数ヶ月〜数年 | 数十年単位、回復に長期を要する |
| 回復 | 雨が降れば回復しやすい | 雨が降るだけでは回復しない |
| 主な原因 | 自然の気候変動 | 気候的要因+人為的要因 |
干ばつと砂漠化、両者は無関係ではありません。干ばつが繰り返されるほど土地は回復する余裕を失っていき、その延長線上にあるのが砂漠化なのです。 1961年以降、乾燥地で干ばつ状態にある面積は年平均1%を超えるペースで増加しています(※2)。この長期的な増加傾向は、乾燥地で砂漠化のリスクが高まっていることを示す一因といえます。
※1出典:環境省|国際的な砂漠化対処
※2出典:IPCC『Climate Change and Land』特別報告書
第5章 世界で砂漠化が深刻な地域と日本への影響
砂漠化の影響は、地域によって大きく差があります。特に深刻な地域と、日本との関わりを見てみましょう。
5-1 アフリカを中心に広がる被害
アフリカでは、土地面積の約45%が砂漠化の影響を受けており、そのうち55%は高リスクまたは非常に高いリスクの状態にあります。世界全体で見ても、過去40年間の浸食によって、耕作可能地の約3分の1が失われています(※1)。
5-2 日本との関わり
日本国内で砂漠化そのものが進行しているわけではありません。ですが、まったく無関係ともいえません。
国立環境研究所では、環境省の研究資金を活用し、北東アジアの草原地域を対象とした砂漠化防止研究に取り組んでいます(※2)。この研究では、衛星画像の解析や現地実験などを通じて、地域の実情に合った砂漠化防止技術の開発を進めています。
また、食料の多くを輸入に頼る日本にとって、海外の乾燥地で進む土地の劣化は、将来の食料調達にも関わりうる課題でもあります。決して遠い地域の問題ではなく、日本の暮らしにも関わってくる世界的な環境問題の一つなのです。
砂漠化を含む世界の環境問題全体については、以下の記事で取り上げています。
※1出典:UNEP『The Economics of Land Degradation in Africa』
※2出典:国立環境研究所 環境展望台|砂漠緑化
第6章 世界と日本で進む砂漠化対策
砂漠化に歯止めをかけるため、世界各地でさまざまな技術や取り組みが進められています。
代表的な技術の一つが「草方格(そうほうかく)」(下図)です。枯れ草を格子状に地面へ埋め込み、風の勢いを弱めながら砂の移動を抑える手法で、わらが分解すれば肥料にもなるため一石二鳥の技術といえます(※)。
水管理の面では、「点滴灌漑」のように水を無駄なく使う技術が塩害の抑制に役立っています。深根性の植物には、夜間に地中深くの水を地表付近へ運ぶ性質があり、この性質を利用した「植物スプリンクラー」も、低コストな技術として注目を集めています。
日本の研究機関もこうした技術開発に加わっており、国立環境研究所は衛星データと野外実験を組み合わせ、地域の実情に合わせた防止技術づくりを進めています。
気候変動が進むほど、こうした対策の重要性は増していくでしょう。
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第7章 私たちにできること
実は、私たちの日々の暮らしともつながっている砂漠化。遠い国の問題と思わず、身近な行動から見直してみてはいかがでしょうか。
- 食品ロスを減らし、農地への負荷を間接的に軽減する
- 輸入食品の生産背景(水資源や土地利用)に関心を持つ
- 砂漠化対処条約や国際機関の活動を知り、寄付や情報発信で応援する
こうした行動は、砂漠化だけでなく、気候変動や生物多様性の保全など、さまざまな環境問題にもよい影響をもたらします。 小さな行動でも、積み重なれば意味を持ちます。
第8章 よくある質問(Q&A)
Q1. 砂漠化の一番の原因は何ですか?
A. 干ばつなどの気候的要因と、過放牧や過耕作といった人為的要因が組み合わさって生じます。人為的要因の背景には貧困や人口増加といった社会経済的な圧力もあり、地域によってはこうした人為的な要因の影響がより大きいとする研究報告もあります。
Q2. 砂漠化と干ばつは同じ意味ですか?
A. 異なります。干ばつは一時的な気象現象ですが、砂漠化は土地の生産力が長期的に失われる不可逆的な変化です。
Q3. 砂漠化はどのくらいの規模で進んでいますか?
A. 世界の乾燥地(極乾燥砂漠を除く)の約7割、約36億ヘクタールがすでに劣化しているとされます。日本の国土の約95個分にあたる広さです。
Q4. 砂漠化は日本にも関係がありますか?
A. 日本国内で砂漠化が進行しているわけではありません。ですが国立環境研究所が海外の砂漠化防止研究に参画しているほか、食料輸入を通じて間接的に関わっています。
Q5. 砂漠化を止めるために何ができますか?
A. 個人レベルでは、食品ロスの削減や輸入食品の背景への関心が挙げられます。国際的には、草方格や点滴灌漑といった技術による土地の再生が進められています。
第9章 まとめ
砂漠化の原因は、干ばつなどの気候的要因と、過放牧や過耕作といった人為的要因が組み合わさって生じます。人為的要因の背景には、貧困や人口増加といった社会経済的な圧力があり、これが土地への負荷を強め、悪循環を生み出しています。
日本国内で砂漠化が直接進行しているわけではありません。とはいえ、食料輸入や研究協力を通じて、決して無関係な問題ではないのです。まずは日々の食卓から、世界とのつながりを意識してみてはいかがでしょうか。

