毎日使っている電気が、どうやって作られているかを意識する機会は少ないかもしれません。実は今、電気の「作り方」は大きな転換点を迎えています。この記事では、発電の基本的な仕組みから、再エネ(再生エネルギー)が広がりつつある理由まで、順を追って解説します。
第1章 そもそも電気はどうやって作られる?
電気の多くは、磁界の変化を利用して作られます。
発電機では、磁石とコイルのどちらかを動かして磁界を変化させることで、電流が発生します。これが発電の基本原理で、「電磁誘導」と呼ばれる現象です。19世紀にイギリスの科学者ファラデーが発見した原理が、現在も世界中の発電所の土台になっています。
火力・水力・原子力・風力などの多くの発電方法では、その回転を生み出すためにタービン(羽根車)を使います。違うのは、タービンを回すために何を使うか、です。
一方、太陽光発電はタービンを使いません。太陽の光エネルギーを直接電気に変換する「光電効果」を利用しています。
第2章 現在の主な発電方法を6種類で解説
現在使われている主な発電方法を6つ見ていきましょう。太陽光以外の5つはすべてタービンを使いますが、タービンを回す方法はさまざまです。
① 火力発電
石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やして水を沸騰させ、発生した蒸気でタービンを回す発電方法です。
出力を調整しやすく、需要に合わせて発電量を増減できるため、日本では長年「電力の柱」として機能してきました。一方で、CO₂を大量に排出するため、気候変動の主要因の一つとして見直しが進んでいます。
② 水力発電
ダムや川の高低差を利用して水を流し、その勢いでタービンを回す発電方法です。
発電時にCO₂を出さず、必要なときに発電量を増やせる「調整力」の高さが強みです。日本は山が多く水資源も豊富なため、古くから活用されてきた発電方法でもあります。ただし、大規模なダム建設による生態系への影響が指摘されることもあります。
③ 原子力発電
ウランなどの核燃料が核分裂するときに生じる熱で水を沸騰させ、蒸気でタービンを回す発電方法です。
少ない燃料で大量の電力を作れるため、発電時のCO₂排出量は非常に少ないのが特長です。しかし、放射性廃棄物の処理問題や、事故時のリスクも見過ごせません。
④ 風力発電(再エネ)
風の力で大型の風車(ブレード)を回し、その回転で風力タービン(風車の回転を発電機につなげて電気を作る装置)を動かして発電する方法です。
発電時にCO₂を排出せず、一度設置すれば燃料コストもかかりません。ヨーロッパでは主力電源の一つになっており、海の上に設置する「洋上風力」も拡大中です。日本でも洋上風力の開発が本格化しつつあります。
⑤ バイオマス発電・地熱発電(再エネ)
木材・農業廃棄物・食品残渣などの有機物(バイオマス)を燃料として燃やし、その熱で水を沸騰させ、発生した蒸気でタービンを回す方法です。これらの有機物は、適切に管理すれば再生可能な資源として利用できるため、バイオマス発電で作った電気は再生可能エネルギーに分類されます。
地熱発電は、地球内部の熱で温められた地下の熱水や蒸気を利用してタービンを回す方法です。天候に左右されず24時間安定して発電できる点が強みです。日本は世界有数の火山国で地熱資源は豊富ですが、温泉地への影響などを理由に開発が進みにくい現状があります。
⑥太陽光発電(再エネ)
太陽の光をソーラーパネルで受け、光エネルギーを直接電気に変換する発電方法です。
タービンを使わず、基本的に可動部分がないため、メンテナンスしやすいのが特長です。屋根の上など小規模でも設置できる手軽さが普及を後押ししています。発電できるのは日中のみで、天候に左右されやすい点が課題ですが、蓄電池との組み合わせで補完できます。
第3章 日本の電気は今、何で作られている?
日本では現在も、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を使う火力発電が、電力供給の中心を担っています。2024年の電源別の内訳は以下の通りです。
| 電源 | 割合 |
|---|---|
| 火力(石炭・石油・天然ガス) | 65.10% |
| 再生可能エネルギー合計 | 26.70% |
| うち太陽光 | 11.40% |
| うち水力 | 7.90% |
| うちバイオマス | 5.90% |
| うち風力 | 1.13% |
| うち地熱 | 0.33% |
| 原子力 | 8.20% |
※出典:ISEP環境エネルギー政策研究所「2024年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」
火力が65%以上を占め、非化石電源(再エネ+原子力)は全体の約35%です。
再エネの中では太陽光(11.4%)が最大ですが、風力はわずか1.13%。風力発電が主力になっているヨーロッパ諸国と比べると、大きな差があります。
第4章 なぜ今、世界では再エネへのシフトが加速しているのか
世界が再生可能エネルギーへと急速に移行しつつある大きな理由の一つは、新設の再エネ設備の発電コストが、化石燃料による新設発電より低いケースが増えているからです。
2024年のIRENA(国際再生可能エネルギー機関)の報告によると、新設発電の平均コストでは、太陽光発電は化石燃料による新設発電より41%安く、陸上風力発電は53%安い水準でした。 2024年に新たに稼働した再エネ設備の91%は、化石燃料による発電よりも発電コストが低かったという結果も出ています(※1)。
かつては「環境のためにコストを負担する」選択肢だった再エネが、今や「経済的にも合理的な選択」になっているのです。
数字にも、その勢いが表れています。2024年に世界で新たに稼働した再エネ設備は585GW(前年比15%増 )で、過去最高を記録しました。(※2)。世界の発電電力量に占める再エネの割合も、2024年には約32%に達しています。
環境への配慮だけでなく、エネルギーの自給自足(エネルギー安全保障)の観点からも、輸入に頼らず国内で作れる再エネへのシフトは世界的な潮流になっています。
※1,2 出典:IRENA『Renewable Power Generation Costs in 2024』(2025年3月)
第5章 日本の再エネ普及の現状と今後の目標
世界と比べると、日本の再エネ普及は分野によって差があります。その背景には、いくつかの構造的な課題があります。
- 送電網の整備が追いついていない
太陽光や風力は、発電量が天気や季節によって変動します。これを安定供給につなげるには、広域で電気を融通できる送電網の整備が必要です。しかし日本では、電力会社ごとに送電網が分かれており、地域をまたいで電気を融通しにくい構造が課題になっています。 - コストが世界平均より高い
日本の太陽光発電コストは1kWhあたり約12.0円(2022年上半期)で、世界平均5.2円の約2倍。陸上風力に至っては日本が14.9円に対し、世界平均は5.2円で約3倍の差があります(※1,2)。山がちな地形による土地の制約や、発電所から送電網につなぐための工事費用(系統接続コスト)など、日本固有の事情が影響しています。 - 地熱開発の制約
火山国でありながら、温泉地や国立公園との兼ね合いで地熱発電の開発が進みにくい現状があります。
こうした課題に対応しながら、日本政府は2040年度に、電源構成に占める再エネ比率を4〜5割とする目標を掲げています(※3)。2024年の26.7%から、今後15年間でほぼ倍増させる計画です。
※1 出典:IRENA『Renewable Power Generation Costs in 2024』(2025年3月)
※2 出典:資源エネルギー庁「発電コスト検証に関するとりまとめ」(2024年12月)
※3 出典:資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画」(2025年2月閣議決定)
第6章 よくある質問(FAQ)
Q1. 電気を作るとき、CO₂が出ない発電方法は何ですか?
A. 太陽光・風力・水力・地熱は、発電時のCO₂排出がほぼありません。バイオマス発電は発電時にCO₂を排出しますが、燃料となる植物が成長過程でCO₂を吸収するため、全体としてはカーボンニュートラルとみなされることがあります。原子力発電も発電時のCO₂排出はほぼゼロです。一方、火力発電は化石燃料を燃やすためCO₂を大量に排出します。日本の電力のCO₂排出量を減らすには、火力発電の割合を下げることが最も重要な課題です。
Q2. 家庭の電気はどうやって来ているのですか?
A. 電力会社が管理する送電網を通じて届いています。発電所で作られた電気は、変電所で電圧を調整されながら、送電線・配電線を経て各家庭に届きます。どの発電所で作られた電気かを物理的に個別追跡することはできませんが、電力会社や新電力のメニューによって、再エネ由来の電気を選ぶことはできます。
Q3. 太陽光パネルを家に設置すると、電気代は下がりますか?
A. 日中に発電した電気を自家消費することで、購入する電力量を減らせます。また余った電気は、契約条件に応じて電力会社に売電できる場合があります。ただし、初期費用の回収には一般的に10〜15年程度かかるとされています。また設置場所の日当たりや電気の使い方によっても効果は異なります。
Q4. 再生可能エネルギーだけで電気をまかなうことはできますか?
A. 技術的には可能とされていますが、現状では課題があります。太陽光や風力は天候によって発電量が変動するため、蓄電池や水力発電による調整力、広域の送電網が必要です。とはいえ、デンマークやドイツなど、すでに電力の半分以上を再エネでまかなっている国があるのも事実です。蓄電・系統整備の進展次第で、日本でも拡大できる余地はあります。
Q5. 「再エネ賦課金」って何ですか?
A. 再生可能エネルギーの普及を支援するために、電気料金に上乗せされる費用です。太陽光など再エネの発電事業者から、電力会社が決まった価格で電気を買い取る「固定価格買取制度(FIT)」を支えるための財源になっています。家庭や企業の電気使用量に応じて負担額が決まります。
Q6. 水素発電とはどんな発電方法ですか?
A. 水素を燃料として利用し、燃焼時にCO₂を直接排出しない発電方法です。燃焼時に排出されるのは主に水(蒸気)だけで、化石燃料と比べて温暖化への影響が少ないため、次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。ただし、水素の製造方法によってはCO₂排出を伴う場合もあります。
第7章 まとめ
電気の作り方を整理します。
| 発電方法 | CO₂排出 | 安定性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 火力発電 | 多い | 高い | 調整しやすいが温暖化の主因 |
| 水力発電 | ほぼなし | 高い | 日本に適しているが開発余地は限定的 |
| 原子力発電 | ほぼなし | 高い | 大出力だが廃棄物・リスク問題あり |
| 太陽光発電 | ほぼなし | 天候依存 | 急速に普及・コスト低下が進む |
| 風力発電 | ほぼなし | 天候依存 | 世界では主力、日本は遅れている |
| バイオマス発電 | 少ない | 高い | 廃棄物の有効活用にも貢献 |
| 地熱発電 | ほぼなし | 高い | 日本は資源豊富だが開発に制約あり |
世界では再エネのコストが化石燃料を下回り、電力の作り方は大きな転換点を迎えています。日本でも2040年に再エネ比率4〜5割という目標が掲げられており、私たちが毎日使う電気の「中身」は、これから大きく変わっていきます。
電気の作られ方を知ることは、エネルギーと環境問題をつなげて考える第一歩です。まずは自分が契約している電力会社のメニューを確認してみることから始めてみてください。再エネ由来の電気を選べるプランが用意されている場合もあります。
電気と環境問題のつながりについては、以下の記事をご覧ください。
電気の作り方が変われば、地球の未来も変わります。その変化は、私たちの"選択"の積み重ねから始まっていくのです。

