CO₂(二酸化炭素)は地球温暖化の主因であることから、なにかと「悪者」とされがちですが、実は私たちの暮らしや気候を支える身近な気体でもあります。本記事では、CO₂の性質や発生源、温室効果としての役割、産業革命前後の濃度上昇と日本の排出量の実態、減らすためにできることまで、わかりやすく解説します。
【この記事でわかること】
- ・CO₂の性質と、自然界・私たちの生活のどこから発生しているか
- ・CO₂が「悪者」とされるようになった理由
- ・産業革命前からの濃度上昇と、日本の排出量の実態
- ・CO₂を減らすために、社会と個人ができること
第1章 CO2とは?――今さら聞けない基本のキ
「CO₂」という言葉を知らない人はいないでしょう。でも、その性質や仕組みまで説明できる人となると、意外と少ないのではないでしょうか。まずは基礎知識から押さえていきます。
1-1 CO2の性質と特徴
水素原子1つに酸素原子2つが結びついてできているのがCO₂です。無色無臭の気体で、常温でも水によく溶けます。
面白いのは、状態が変わると呼び方も変わる点です。気体の状態では一般に「二酸化炭素」または「炭酸ガス」と呼ばれます。固体は「ドライアイス」、水に溶けると一部が炭酸となり、炭酸水として利用されています。炭酸飲料のシュワシュワや、消火器の消火剤など、私たちの生活のすぐそばにある物質です。
1-2 なぜ今、改めて知っておくべきなのか
CO₂は特別な物質ではありません。私たちの呼吸にも含まれる、ありふれた気体です。しかし、その総量の急増が世界共通の課題となっています。
CO₂自体は、何も特別な物質ではありません。呼吸のたびに私たちの体からも出ている、ごくありふれた気体です。問題は、その「量」が急激に増えていることにあります。
日本の温室効果ガス排出量(CO₂換算)のうち、二酸化炭素(CO₂)は約9割を占めています(※1) 。つまり「温室効果ガス」という言葉は、ほぼ「CO₂」と置き換えても差し支えないほどです。だからこそ、CO₂について知ることは、地球温暖化や脱炭素をはじめとする環境問題全体を理解する近道になります。
※出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)「データで見る温室効果ガス排出量(日本)」
第2章 CO2はどこから生まれる?
CO₂の発生源は一つではありません。自然の営みから生まれるものと、人間の活動が生み出すもの、2つの流れがあります。
2-1 自然のサイクルの中のCO2
動物が呼吸をすればCO₂が出て、植物はそれを光合成によって取り込み、酸素へと変えていきます。火山が噴火すれば、そこからもCO₂が放出されます。
こうして炭素は、大気・海・森・生き物の間をぐるぐると巡り続けています。これは地球が太古から保ってきた、ごく自然なバランスの一部です。
2-2 人間活動による排出
ところが18世紀、産業革命をきっかけに事情が変わります。石炭・石油・天然ガスといった化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出す方法が、人間社会の中心になったのです。
火力発電所での発電、自動車の走行、工場での燃料の燃焼などが、人間活動によるCO₂排出の主な発生源です(※)。
自然が本来吸収できる量を超えて、排出だけが増え続けてきたこと。これが次章のテーマ、「地球温暖化」に直結していきます。
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第3章 なぜ「悪者」と言われるようになったのか
CO₂が「地球温暖化の主犯」と呼ばれる背景には、科学的な裏付けがあります。
3-1 温室効果ガスとしての役割
CO₂は「温室効果ガス」の代表格です。太陽から届いた熱を、大気の中に閉じ込めておく性質を持っています。
地表から出ていく熱を吸収し、再び地表に向けて送り返す。この仕組みのおかげで、地球は平均約14℃という過ごしやすい環境を保てているのです。問題は、この「温室効果ガス」の量が過剰になっていることにほかなりません。
3-2 IPCCが示す温暖化への寄与度
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書のなかで、地球温暖化の要因ごとの寄与度を明らかにしています。2010〜2019年の気温は、産業革命前(1850〜1900年)と比べて約1.1℃上昇しました(※1)。
このうちCO₂だけの寄与分は0.8℃(0.5〜1.2℃の範囲)とされています。さらに、CO₂・メタン(CH₄)・一酸化二窒素(N₂O)の3種類を合わせると、人為起源の温室効果ガスによる温暖化への寄与の大部分を占めています(※)。
いま起きているさまざまな環境問題も、多くはこの地球温暖化に端を発しています。詳細は今起きている環境問題10選|種類・原因・被害を一覧で解説にまとめています。
※1出典:IPCC「AR6 Synthesis Report」
第4章 数字で見るCO2――濃度上昇と日本の排出量
CO₂が増え続けている事実は、観測データにもくっきりと表れています。この章で、代表的な数字を見ていきましょう。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 産業革命前のCO₂大気中濃度 | 約278ppm | 気象庁 |
| 2024年のCO₂世界平均濃度 | 423.9ppm(52%増) | 気象庁 |
| 日本の温室効果ガス排出量 (2023年度) |
約10億1,700万トン (CO₂換算) |
環境省 |
| 日本の温室効果ガス排出量に占めるCO₂の割合 | 約90% | JCCCA |
4-1 産業革命前からの濃度の推移
気象庁の観測データによれば、産業革命前(18世紀半ば)の大気中濃度はおよそ278ppmでした。それが2024年には、世界平均で423.9ppmまで上昇しています。実に52%もの増加です(※1)。
国内で最も長い観測記録を持つ岩手県・綾里の観測地点でも、この変化ははっきり表れています。1987年に観測を始めて以来、2012年には初めて月平均で400ppmという大台を超えました(※1)。
濃度自体は大気全体のわずか0.04%程度に過ぎません。それでも、地球全体の大気量を考えれば、この増加分は決して小さくないのです。目には見えない気体だからこそ、数字で規模感をつかんでおくことが大切でしょう。
4-2 日本の排出量の現状と部門別内訳
2023年度、日本の温室効果ガス排出・吸収量はCO₂換算で約10億1,700万トンでした(※2)。前年度比で4.2%減、2013年度比では27.1%減となり、過去最低値を更新しています。
この背景には、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電の再稼働に加え、製造業の生産活動の変化などが影響したと考えられています(※2)。
一方、エネルギー起源CO₂排出量(注)を部門別に見ると、2024年度はエネルギー転換部門が40.4%で最も多く、次いで産業部門、運輸部門、業務その他部門、家庭部門、その他となっています(※3)。
このうち家庭部門の内訳を見ると、照明や家電製品による排出が全体の46%を占めています(※4)。日々の電気の使い方こそが、家庭からの排出量を大きく左右しているといえそうです。
(注):発電や自動車、工場などでエネルギーを利用する際に排出されるCO₂のこと。
<エネルギー起源CO₂排出量の割合>
出典:JCCCA「日本の部門別二酸化炭素排出量(2024年度)」
※1出典:気象庁「大気中二酸化炭素濃度の経年変化」
※2出典:環境省「2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について」
※3出典:JCCCA「日本の部門別二酸化炭素排出量(2021年度)」
※4出典:一般財団法人家電製品協会「家電と地球温暖化」
第5章 CO2は本当に「悪者」なのか
ここまでの数字を並べると、CO₂は「厄介者」以外の何物でもないように思えるかもしれません。しかし、その役割を正しく知ると、見え方が少し変わってきます。
5-1 生命を支える温室効果の役割
もし温室効果ガスがなくなったら、地球の平均気温はマイナス19℃になると考えられています(※)。いま私たちが享受している温暖な気候は、CO₂をはじめとする温室効果ガスが熱をほどよく閉じ込めてくれているからこそ成立しているのです。
CO₂そのものが悪いわけではありません。むしろ、なくては困る存在なのです。
5-2 問題なのは「量」であるという視点
本当の問題は、CO₂が存在することそのものではなく、自然が吸収しきれる範囲を超えて排出され続けていることにあります。
森林や海洋には、CO₂を吸収する力が備わっています。ですが、排出量がその吸収力を上回れば、大気中の濃度はどんどん積み上がっていきます。植物や海の吸収力の範囲内に排出量を抑えること。それこそが、気候を安定させる最大の鍵になるでしょう。
※出典:気象庁「日本の気候変動2025」(用語集「温室効果」)
第6章 CO₂を減らす取り組み――私たちにできること
排出量を抑えるための取り組みは、社会・企業レベルと、個人・家庭レベルの両方で進んでいます。
6-1 社会・企業レベルの取り組み
発電分野では、再生可能エネルギーへのシフトが着実に進んでいます。太陽光や風力による発電は、その過程でCO₂を出しません。
企業レベルでも、新しい技術開発が進んでいます。CO₂を回収して地中に貯留するCCSや、回収したCO₂を原料として再利用するカーボンリサイクルは、その代表例といえるでしょう。
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6-2 家庭でできる小さな行動
大がかりな技術革新だけでなく、日々のちょっとした選択も排出量削減につながります。たとえば、次のような行動が挙げられます。
・照明や家電をこまめに消し、省エネ性能の高い製品へ切り替える
・冷暖房の設定温度を見直す
・移動手段として、公共交通機関や徒歩・自転車も候補に入れる
・再生可能エネルギー由来の電力プランを検討する
家庭におけるCO₂排出の大部分は、照明や家電に由来しています。だからこそ、日々の小さな積み重ねが、排出削減に着実につながっていくのです。まずは自宅の電気の使い方から見直してみてはいかがでしょうか。
脱炭素の必要性については、なぜ脱炭素が必要?2050年の未来シナリオから考えるで解説しています。
第7章 CO2についてよくある質問
最後に、CO₂についてよく寄せられる質問をまとめました。
Q1. CO2は人体に有害ですか?
A.通常の大気中濃度(約0.04%)であれば、人体への害はありません。一方、高濃度の二酸化炭素が滞留した環境では、頭痛やめまい、呼吸困難などの健康影響が生じるおそれがあります。そのため、換気の悪い場所では十分な注意が必要です 。
Q2. CO2と一酸化炭素は何が違いますか?
A.CO₂(二酸化炭素)は炭素に酸素原子が2つ結びついたもの、CO(一酸化炭素)は酸素原子が1つだけ結びついたものです。一酸化炭素は不完全燃焼によって発生し、ごく少量でも人体に強い毒性を持つ点が大きな違いです。
Q3. CO2はどのくらい大気中に残りますか?
A.一部は数年のうちに海や森林に吸収されます。しかし残りは大気中に長くとどまり、数百年単位で影響を及ぼし続けるとされています。一度上がってしまった濃度は、簡単には元に戻りません。
Q4. 日本は世界の中でどのくらいCO2を排出していますか?
A.JCCCAの集計によると、日本のCO₂排出量は世界全体の約2.9%を占めています(※) 。上位国がどう動くかが、世界全体の対策の行方を大きく左右します。
Q5. CO2の排出量はどうやって計算していますか?
A.発電・工業プロセス・輸送など、活動の種類ごとにエネルギー使用量を割り出し、それぞれの排出係数を掛け合わせて算出します。日本では環境省と経済産業省が、毎年この集計・公表を行っています。
Q6. CO₂の排出を実質ゼロにすることは可能ですか?
A.そもそも、CO₂の排出を完全にゼロにすることが目標ではありません。排出量から吸収・除去量を差し引いた合計をゼロに近づける「カーボンニュートラル」という考え方が国際的な目標になっています。日本は2050年の実現を掲げています。
※出典:JCCCA「温室効果ガス・二酸化炭素排出量(世界)」
第8章 まとめ
CO₂は、決して悪者ではありません。私たちの暮らしと地球の気候を、根本から支えている身近な気体です。
ただ、産業革命以降、自然が吸収できる量を超えるペースで排出が増え続けてきたのは事実です。その積み重ねが、地球温暖化という形で私たちの前に現れています。今回見てきた数字や仕組みをふまえたうえで、まずは家庭でできる小さな一歩から見直してみましょう。


