グリーンアライアンスが、SDGsへの貢献のために取り組むグリーンアクションのひとつが、「開発途上国支援プロジェクト」です。2024年11月、その大きな目標としていたバングラデシュでのマングローブ植林が完了しました。
地球温暖化を抑制するマングローブ林を守るために
マングローブは、熱帯から亜熱帯の海岸線付近に群生する常緑樹です。その林は二酸化炭素(CO2)を吸収する力をもち、貯留量は温帯や亜寒帯などに育つ森の数倍とされ、このため地球温暖化を抑制する森林として大変注目されています。加えて、高波や津波などから陸地を守る防波堤として、さらに藻類や小さな魚介類が生息するユニークな生態系により、その地域の人々の命を支えてきた恵みの場としても、非常に貴重な存在です。
グリーンアライアンスでは、環境貢献への取り組みである「グリーンアクション」のひとつとして、このマングローブの林を守る目的の「開発途上国支援プロジェクト」を企画しました。具体的には、世界自然遺産であり、世界最大のマングローブ林であるシュンドルボン(その62%はバングラデシュに広がる)の再生を目指すものです。現在、バングラデシュのマングローブ林は、主要産業であるエビの養殖などの影響を受けて破壊され、年々減少しています。ここにマングローブの苗木を植林し、大切な林を再生させよう、というのがプロジェクトの趣旨です。植林する苗木は6,800本。これは、20年間で9,656tのCO2削減効果が期待できる規模です。
現地の人々の手で6,800本を植林
グリーンアライアンスでは、韓国の環境専門公益財団「環境財団」とともに、バングラデシュの現地政府機関とも協力して、今回のマングローブ植林を実施しました。初年度となった2024年、下記のようなスケジュールでプロジェクトは進められました。
何もなかった植林地(写真 上左)に苗が植えられた(写真 上右)。グリーンアライアンスのロゴが入った紹介看板も掲げられた(写真 下)
植林地は、シュンドルボン沿岸にあるグナリ村。世帯数24という小さな集落ですが、ここで現地住民52名をはじめ、70名が参加してマングローブの苗木を植える作業が行われました。そしてまずは6,800本の植林が完了しました。
グナリ村の地主、教師、指導者、学生など数多くの住民が参加してマングローブの苗を植えた
植林にあたっては、まず、バングラデシュ環境開発協会から参加者たちへ植林のマニュアルが配布されました。マングローブは品種によって生育条件が異なるため、品種や苗木の大きさに合わせ、植穴の大きさや苗木を植える間隔や位置などを調整する必要があるためです。参加者たちは、このマニュアルに沿って穴をほり、苗木を植える苗木を植えていきました。
■植林したマングローブの品種
・Aviccinia Officinalis
・Nypa Fruticans(ニッパヤシ)
・Soneratia apetala
・Soneratia Casiolaris(ナンヨウマヤプシキ)
人々を自然災害から守り、生活を支える重要な一歩
現地の受け入れ窓口となったバングラデシュ環境開発協会 代表 Md. Maksudur Rahman氏に、今回の寄贈についてお話を伺いました。
バングラデシュ環境開発協会
代表 Md. Maksudur Rahman氏
—マングローブ林は地域の人たちにとってどのような存在ですか。
Md. Maksudur Rahman氏:
マングローブの林は、地域住民へ非常に大きな役割を果たす存在です。この地域は、川や沿岸に隣接し頻繫に自然災害が発生します。近年も、大型サイクロンの被害に遭い、命や家、道路、耕作地、家畜を失いました。マングローブの林は、地域住民を守る盾として機能し、自然災害の影響を最小限に抑える上で重要な役割を果たしてくれます。その他にも地域住民は、ハチミツの採取、Soneratia apetalaから採れるマングローブ果実のピクルスや、Aviccinia Officinalisのマングローブティー、Nypa Fruticansのシロップなどの生産と販売によって、収入を得ることができます。また、Nypaの葉は茅葺きの材料としての活用も可能です。成熟したマングローブの林からは、家庭で使用する薪を集めることもでき、地域住民へ多様な利益をもたらしてくれます。
—今回の植林をどのように受け止めていますか。
Md. Maksudur Rahman氏:
地域住民へ大きく貢献する活動であると非常に肯定的に受け止めています。いつの日か、このマングローブの林は地域住民へ生態的にも経済的にも利益をもたらしてくれるでしょう。この林は生物多様な生態系回復の手助けとなり、危険な自然災害から地域住民を守り、そして地域住民の収入源となるでしょう。
—マングローブ林は、今後どのように育ってほしいですか。
Md. Maksudur Rahman氏:
地域住民にはマングローブが健やかに育つように定期的に手入れをするようにお願いしています。3,4年後には立派なマングローブが育ち、7、8年後には成熟した林が見られるでしょう。そしてそれが、失われていた生物多様な生態系を回復する手助けとなり、多くの昆虫、鳥、動物の住処となることを期待しています。
—グリーンアライアンスの活動について、どう思われますか。
Md. Maksudur Rahman氏:
シュンドルボンの沿岸地域では、地域住民が主体となってマングローブの復元と保全、生態系再生を行う取り組みを推進しています。今回、バングラデシュ環境開発協会では、グリーンアライアンスの支援を受けてグナリ村の地域関係者とともに6,800 本のマングローブの苗木を植えました。私はこの活動を心から歓迎し、高く評価しています。これは、シュンドルボンの地域の人々をさまざまな自然災害から守り、生活を支える上で重要な一歩となるでしょう。自然と環境の再生・保全、そして沿岸地域の海岸浸食防止のためにはグリーンアライアンスのようなマングローブの植林・保全活動がますます必要とされています。このような活動を推進してくださったグリーンアライアンスには心から感謝しています。
今回の植林に際しては、グナリ村では、2024年10月29日に「地域社会を基盤としたエコロジカルなマングローブ再生開始」として記念式典が行われた
バングラデシュの持続可能な社会の実現に向けて
2024年の植林完了について、グリーンアライアンス事務局 代表 李泰基氏のコメントもいただきました。
グリーンアライアンス事務局 代表
ハンファジャパン株式会社
エナジーソリューション事業部 執行役員 事業部長
李泰基氏
SDGsで掲げる目標のひとつである開発途上国への支援を行いたく、グリーンアライアンス発足初年度にプロジェクト化し即時始動いたしました。グリーンアライアンスの活動に賛同いただいたパートナー企業様をはじめ、シュンドルボンの地域の方々、そしてバングラデシュ環境開発協会の方々など、多くの方々のご尽力のおかげで、この度マングローブの植林を無事に完了することができました。ご協力いただいた皆様へ心より感謝申し上げます。
マングローブは、地球温暖化の抑制や防災に貢献するだけでなく、地域の生物多様性の保全、海岸線の保護など、豊かな自然環境の形成に不可欠な役割を担っています。マングローブ植林は8年の歳月をかけてようやく成熟した林になると聞いていますが、今回のマングローブ植林活動が、持続可能な社会の実現に向けた一歩となることを確信し、大変嬉しく思います。遠く離れた地であり、この先の植林の成長過程についてはまだ実感はありませんが、グリーンアライアンスは今後も皆様とともに、この貴重な経験を活かし、様々な環境保全活動に積極的に取り組んでまいります。
引き続き、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。