2026.06.26 活動内容

グリーンアライアンス・アンバサダー 田中幸氏と歩く、自然とエネルギーが共存する生田緑地

グリーンアライアンスが全国の児童施設や公共施設などへ太陽光発電設備の無償提供を行う「グリーンギフト」。その寄贈先として今回選ばれたのが、豊かな自然と文化施設が共存する、神奈川県川崎市の都市公園「生田緑地」です。
今回は、グリーンアライアンスのアンバサダー、田中幸さんが園内を歩きながら、自然と人、エネルギーが共存する生田緑地の必見スポットや散策ルートの魅力を詳しく紹介していきます。

未来を育てる、生田緑地という大きな自然のミュージアム

生田緑地は、川崎市北西部・多摩丘陵に位置する、約179haの広大な都市公園。東京ドーム約38個分もの広さを誇り、美術館や科学館、日本民家園など多彩な文化施設が点在し、広大な園内全体が"ひとつのミュージアム"とも称される空間です。
縄文遺跡や古墳群、戦国時代の枡形城跡なども残り、都市近郊にありながら、太古から続く自然と人との関わりを感じることができる場所として、1941年の都市計画緑地指定以降、大切に保全管理が続けられてきました。

都市近郊でホタルが自然発生する貴重な環境を保つ「ホタルの里」(左)。漫画家・藤子・F・不二雄氏の原画などを展示するミュージアム(右)など文化施設も点在

最大の特徴は、市民参加型のパークマネジメント。現在は指定管理者制度に加え、約65団体が参加する「生田緑地マネジメント会議」による協働運営を実施しており、自然を守るだけではなく、楽しみながら、暮らしながら、共同体として関わり続けるという体制が整えられています。

五感で感じる、都市の中の自然

園内は、旧向ヶ丘遊園跡地とその周辺を含み、ばら苑や川崎市藤子・F・不二雄ミュージアムがある「東地区」、川崎国際生田緑地ゴルフ場を中心とした「南地区」、そして東口ビジターセンターを含む「中央地区」の大きく3エリアに分けられます。

寄贈式に先立ち、起伏に富んだ地形の中に自然探勝路が整備された中央地区を散策しました。
スタート地点は、グリーンアライアンスより太陽光発電設備が寄贈・設置された東口ビジターセンター。ここからまず幸さんが目指したのは、標高84mの「枡形山展望台」です。180段の階段を上りながら、まず耳に入るのが鳥の声。国道からほど近いにもかかわらず、鮮やかな緑とやさしいさえずりに包まれ、一歩ごとに都市の感覚がほどけていきます。

舗装路も整備されており、日常の延長線上で無理なく自然に触れられるのもこの緑地の魅力です

「地方から久々に上京すると、満員電車ではやはり息苦しさを感じます。でも、ここでは空気が変わりますね。都市に住む方にこそ大切な自然だと実感します」
そう語る幸さんの言葉通り、森はとても穏やかな気配に満たされています。

川崎の街を一望する枡形山展望台

上部にある展望台からは360度のパノラマビューが広がります。晴れていれば群馬の山々や横浜方面、富士山まで望めるのだそう。太陽の下、都市では人々が暮らし、森では動植物が生きている。それぞれの営みを実感する風景です。
この日はあいにくの雨模様で、園内に霧が立ち込め、都市と自然の境界が曖昧に。その様子もまた美しく、森と街がゆるやかにつながっていることを、より体感できる風景が広がっていました。

天に向かってまっすぐ伸びる、メタセコイアの林へ

枡形山を下り、反対側の入り口である「西口サテライト」に向かいます。木の温もりに包まれた小屋の内部には、園の常連たちが拾い集めたというユーカリの葉や樹皮を加工した工芸品が飾られていました。

施設の西側入口にある案内所「西口サテライト」(左)。園の歴史を物語るように、苔むした大木があちらこちらに佇む(右)

さらに歩くと、緑に覆われるように建つ川崎市岡本太郎美術館が現れます。自然と文化、緑と人工物が無理なく共存している景観も、生田緑地の特徴です。

オブジェが点在する西口広場からは、岡本太郎氏制作の「母の塔」が見えます。大地に深く根ざした巨木のたくましさなどをイメージしたシンボルタワーは、メタセコイアと同じ30mの高さです(左)。美術館は2029年3月31日まで改修工事のため休館(右)

続く階段には水が流れており、石が置かれ、踊り場には木が生えています。水もまた、自然を巡るひとつのエネルギー。葉を伝い、土へ還り、湧水となって森や人の暮らしを潤していく。そんな流れを感じることができる場所です。

水流音が涼しさを演出する幅広の階段(左)。若手現代アーティストの作品も展示(右)

カエルの鳴き声を聞きながら水辺を少し歩くと、メタセコイア林へ。戦後間もなく植栽されたこの木々は、現在では高さ30mを超え、生田緑地を象徴する風景となっています。

メタセコイアの幹に生えた苔からも、生田緑地の豊かさが感じられる

ここで幸さんは、得意とする"苔"をテーマに考察します。
「普段ガイドとして歩く高山帯の森とは全く違いますね。たとえば、私がよく行く八ヶ岳などは、火山活動によって形成された比較的新しい地形で、大きな木が根を張りにくく、そのため苔が増えやすいんです。一方、背の高い木が育つこのメタセコイア林では、苔の生え方も異なります。植生がより多様で豊かにも感じますね。同じ"自然"でも、厳しい"森林限界"といわれる高山地帯とは対照的です。ここでは、あらゆる植物がのびのびと育って、"やすらぎ"のようなものを感じます」

林の先で宇宙とつながる

メタセコイアの林を抜けると、週末には多くの人でにぎわう「中央広場」へ。一角には、実際に走っていたという蒸気機関車「D51」の屋外展示もあり、乗り物好きな子どもたちにとっても嬉しいスポットとなっています。
隣接する「かわさき 宙(そら)と緑の科学館」では、竹下研館長に内部を案内していただきました。ここは園内でも特に人気の施設で、地域の身近な自然から宇宙までをテーマに、体験会やワークショップなど参加型プログラムを多数展開しており、環境教育の面でも重要な役割を担っています。

竹下館長から、川崎市のマップを見ながら説明を受ける(左)。1階展示室では、市内の多様な動植物を間近で観察(右)。観測記録や貴重な資料を用いて太陽を徹底解剖する「2026年企画展」も、7月25日〜8月23日に開催予定

館内にはプラネタリウムもあり、世界に一台の投影マシン「MEGASTAR-Ⅲ FUSION」が導入されています。圧倒的な星数を投影できることで知られるこのマシンを開発したのは、川崎市出身のプラネタリウムクリエイター・大平貴之氏。幼少期にこのプラネタリウムを訪れた経験が現在の道につながり、こうして地元へ学びを還元したそうです。

プラネタリウムドームの直径は18m。録音音声ではなく、リアルタイムの実況で鑑賞できるのも魅力(左)。ずっしり重い隕石を実際に触ることも(右)

林を歩いた先で、その壮大な循環の源となる宇宙へ、というのもなかなか面白い流れです。「太陽光発電」や「循環」というキーワードにもつながるこの科学館に、幸さんも興味津々です。
竹下館長も「今後は太陽光やエネルギー、自然保護といった視点を取り入れた展示や取り組みも展開していきたい」と説明してくれました。

楽しい自然体験が環境保護の心を育む

最後は、バードウォッチャーたちとすれ違いながら、野鳥の森を抜け、ビジターセンター前のしょうぶ園へ。まだ少し花の時期には早かったようですが、幸さんは嬉しそうです。
「高山帯では環境が厳しいため、限られた植物しか育ちません。でも、ここでは名前もわからないほど多様な植物を見ることができます。花屋にあるものよりも生き生きとして見えるし、季節を感じることもできますね」

6月上旬から中旬には見頃を迎え、約2800株のハナショウブが楽しめるそう。雨の中、咲き始めのショウブはひときわ鮮やか

広大な園内では、地図を持っていても何度か道に迷いましたが、そのたびに新しい風景や植物に出会えました。また、散策中に一度もゴミを見かけなかったことも印象的でした。ここへ通う人々のマナーや意識の高さが、こうした豊かな環境を支えているのでしょう。

丘陵地形を活かした園路は歩きごたえがあり、散策だけでもほどよい運動に

山岳ガイドである幸さんにとっても、生田緑地は刺激や学びに満ちた場所だったようです。
「都会の中にありながら、これだけ多くの自然を残し、気軽に家族で楽しむことができる大きな空間があるのは素晴らしいと思います。自然体験が子どもたちの楽しい思い出となり、そこから"自然を守りたい"という気持ちも自然に芽生えていく。この緑地はそんな貴重な体験を育む場所なのだと思います」
緑の中を歩き、この地がグリーンギフトを贈るのにとてもふさわしい、価値ある場所だと実感した様子です。

Text & Photo:Cast Inc.

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