2026.06.30 インタビュー

Happy Solar Life プロスノーボーダー 田中幸さんの日当たりのいい生活
―第2回自然のそばで、家族と暮らす。佐久で見つけた豊かさ

2026年2月より、グリーンアライアンス・アンバサダーとして活動している田中幸(たなか さち)さん。プロスノーボーダーとして、また山岳ガイドとして、一年の大半を自然の中で過ごす幸さんの等身大の活動をご紹介する連載の第2回。

今回は、活動拠点である長野県佐久市での豊かな暮らしと、その環境を守り未来へつないでいくために実践している、太陽光発電をはじめとするグリーンアクションについてお届けします。

心に余裕が生まれる、自然溢れる長野県佐久市での暮らし

幸さんがご家族と暮らす長野県佐久市は、中山道の宿場町として栄え、古くから人や物、文化が行きかう交流の地として発展してきました。一方で、冬の厳しい寒さや自然条件の中で人々が支え合いながら暮らしを築いてきた土地でもあります。
幸さんは佐久市出身のご主人との結婚を機に、約10年前にこの地に移住しました。
「当時は、正直ちょっと雪が少ないなと思いました(笑)」
プロスノーボーダーの彼女には、豪雪地帯ではない佐久での暮らしは少し物足りないかと思ったようです。けれど、八ヶ岳や浅間山など、雄大な山岳に囲まれた中で暮らすうち、その印象は大きく変化。周辺には複数のスキー場があり、どこへも1時間圏内。仕事や子育てと両立しながら雪山へ通うことができます。また夏も、気軽に山歩きに出かけることができるなど、まさに理想的な環境でした。

千曲川の両側に豊かな田園が広がる佐久平。南には八ヶ岳(写真)、北には浅間山がそびえる

自然環境と都市機能のバランスもよく、また「子育て支援都市」として、安心して暮らせる環境が整っていることなども、気に入っている点だといいます。
「"田舎暮らし"の楽しさと利便性のどちらもあるのが魅力。特別なことではなく、日常がすごく豊かに感じます。登山やスノーボードができるのはもちろんですが、毎朝田んぼをながめながらランニングしたり、近所の緑地に子どもたちと遊びに行ったり、そんな自然が身近にある生活が、とても心地いいんです。帰ってほっとできる場所、リセットできる拠点があることで、独身時代よりも気持ちの切り替えがうまくできるようになったと思います」

四季の移ろいを感じながらのランニングは、大切なリフレッシュの時間(左)。お迎え後は、みんなで公園へ(右)

お米も野菜も自分たちで作る、その豊かさを実感

"佐久平"と呼ばれる佐久盆地は、浅間山の火山灰と千曲川が運ぶ泥土によって、肥沃な土壌が作られ、古くから農耕文化が育まれてきました。幸さんのお義父さんも、専業の米農家。ご自宅前をはじめ、数カ所で広大な田んぼを管理しています。幸さんも、ご主人と一緒に農業の手伝いをしており、この春にも、家族総出で田植えを行いました。

機械の操縦はご主人。みんなで力を合わせて田植えをサポート。子どもたちにとっても忘れられない体験に

幸さんは以前から、「作る」という行為そのものに憧れがあったといいます。
「農業ってかっこいいなと思っていたんです。でもイメージと実情はまったく違いました。"田植え""稲刈り"くらいの作業しか知りませんでしたが、誰の目にもつかない見えない努力がたくさんある。細かい作業も多くて驚きました。プロの農家さんを尊敬しますし、食べ物は残せなくなりました。時代に合わないとも感じる苦労も多く、いろいろなストーリーを食材に感じるようになりました」
家族で食べるお米は、もちろん自家製のもの。畑もあり、野菜もほぼ自給自足なのだとか。生活の基本である"食"を自分たちで賄う、ごく本質的な豊かさを感じられる暮らしです。
「私が子どもの頃は、野菜の旬なんて考えたこともなかったですが、今、我が家の子どもたちは季節の野菜を知っている。すごくいいことだなと思います」

風景を映し込む田植え後の田んぼ。美しい情景の背後には様々な苦労も

環境変化に合わせて"加減"を工夫する。太陽光発電という選択

佐久での農業をしながらの暮らしは、季節や気候、周辺の様子を見極めながら次の予定を立てていく、自然と共生する生活でもあります。この道50年のお義父さんも、毎年新しい栽培方法に挑戦しています。ご本人はそれを"良い加減"や"良い塩梅"にするといいます。つまり、時代や環境の変化に合わせて試行錯誤し、持続可能なバランスをとるということでしょうか。

春先には苗の世話も。幸さんも、農家のプロであるお義父さんの指導を受けながらひとつずつ勉強中

幸さん自身も日々の暮らしの中で、自然の変化に気づくこと、そしてそれに応じた加減を見極めることの大切さを感じているようです。
「この辺りに毎年やってきていた鳥も最近は見なくなりました。花やイナゴも減っているように思います。普通にいたものがいなくなるって、ちょっと怖いですよね。こういうことを体感していると、無意識のうちに環境を守ることを考えるようになります」
そのひとつが太陽光発電の導入です。娘さんの誕生をきっかけにご自宅を新築。その際に迷うことなく太陽光発電システムを設置しました。
「長女の学資保険のような感覚でつけました。主人が再生可能エネルギー関連の仕事をしており、経済的にも、また環境にも良いということは知っていましたし、むしろ"付けない理由がない"という感じでしたね」

太陽光パネルの設置に適した片流れの屋根と蓄電池(太陽光パネル定格出力:14.2kW、蓄電池容量:6.5kWh)。発電量や使用量をリアルタイムで確認でき、節電や家計管理にも役立つ

幸さんのお宅では大容量の太陽光パネルに加え、蓄電池も設置。昼間発電した電気は自宅で使うほか、余った電気は蓄電、さらに余剰分は売電ができる仕組みです。夕方以降は蓄電池から自宅に給電されます。このため、家中の電力は自家発電によりほぼ賄われており、さらに売電量が使用量を上回るため、年間を通じて電気代が実質ゼロ。それどころか、プラスになっています。
「電気代が助かっていることもうれしいですが、同時に、なるべく化石燃料で作る電気を使わない、と意識するようになりました。料理やタブレットの充電、洗濯など、電気を使う作業は、できるだけ発電量の多い日中に行っています」

最も電気を使うのはキッチン。IHヒーターで煮込むのは、材料の野菜すべてがお庭で採れるというカレー(左)。子どもたちのお気に入り、電動キックバイク「グリーンアライアンス号」への充電も日中に

また、家族の安全を考えたときにも、太陽光発電+蓄電池の存在は大きいといいます。「以前、夜に停電になったことがあるのですが、電気が消えたと思ったら、すぐに蓄電池からの放電に切り替わり灯りがつきました。冷蔵庫など家中の電気製品がそのまま使えてありがたかったし、本当に安心しました」

夜のご自宅。やさしい灯りがともる空間

幸さんのお子さんたちにとっては、こうして電気が自給自足できる生活は、今当たり前に映っているかもしれませんが、
「子どもたちが電気の大切さやクリーンエネルギーについて、日々の暮らしのなかで学べる環境にできたこともよかったと思います。大きくなって一人暮らしをするようになれば、このありがたみを実感するのでは(笑)」

家族で実践する日々のグリーンアクション

お米や野菜の自給自足、太陽光発電の導入など、様々なグリーンアクションを実践している幸さんのご家族。
「環境が変わっていることを身近に感じるからこそ、何とかしないと、という思いが自然とわき、家族みんなで、できることを無理なくやっているだけです」
食べ残しはなるべく出さないよう心掛け、それでも余ったものは庭のコンポストへ。食品トレーやペットボトルは、スーパーマーケットの回収ボックスへ。買い物にはマイバスケットを持参し、子どもたちも自然とリサイクルに参加しています。また、服やおもちゃを購入する際も、「本当に必要なものか」を考えるようになったそうです。

野菜くずなどは畑のコンポストへ。自家製のお米から出る米ぬかを発酵促進剤にも活用

佐久の美しい自然に囲まれた環境の中、3人のお子さんを育てながら、地に足がついた生活を目指す幸さん。その穏やかで心地よい暮らしをこの先も続けるため、そしてお子さんたちに引き継いでいくための想いが、そのままグリーンアクションへとつながっているようです。
夕方、近所の自然の中を散策する幸さんの表情は、本当にリラックスして楽しそうでした。最後に、佐久での暮らしを楽しむ幸さんのおすすめスポットをご紹介します。

幸さんの佐久LIFE お気に入りの場所1
地元食材が主役の環境にもやさしい料理 MaruCafe

佐久市出身のオーナーが営む自然派カフェ。「まる」には、循環やご縁の"円"という意味が込められており、地元食材を生かした料理を提供するこの店では、SDGsという言葉が広まる以前から環境を意識した取り組みを続けてきました。オーナーの柳澤真理さんが、やさしい料理と空間を提供しながら、地域の"灯り"のような存在を目指しています。おばあさんが経営していた薬局を改装したという建物は、昭和の雰囲気に満ち、落ち着く空間です。

日替わりの「本日のランチ」は、地粉を使ったピタパンに炭火焼チキンを合わせた「WABISABI PITTA Sandwich」。一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒーもおすすめで、幸さんはご主人とともに農作業の合間によく立ち寄るそう

幸さんの佐久LIFE お気に入りの場所2
地域密着型スーパーマーケット ツルヤ

新鮮な地元食材や特産品を活かしたオリジナル商品が人気。長野県内を中心に展開しており、ご当地スーパーとして県内外を問わず多くのファンに愛されています。環境への取り組みにも積極的で、一部店舗では太陽光発電設備を導入。店頭では食品トレーや牛乳パック、ペットボトルの回収を行っているほか、エコバッグやマイバスケットの利用も推進しています。タンチョウなどの野鳥保護や生息環境の保全に役立てる「ツル保護募金」を約40年にわたり継続しています。

子どもたちにとっては、リサイクルとおやつ選びがセット。季節や旬を感じられる豊富な品揃えで、日々の買い出しも楽しい時間になっている

プロフィール

田中幸(たなか さち)
プロスノーボーダー、自然ガイド、ラジオパーソナリティ

1981年、滋賀県湖南市出身。高校時代からボート競技を始め、銀行に就職後は実業団でも活躍。25歳の時プロスノーボーダーとなり、さまざまな大会に出場。多くのDVD作品の出演やプロデュースを手掛けるほか、ツアーやイベントの企画など、国内外の雪山を拠点に活動。長年雪山に向き合い、オリンピック・スノーボード競技解説者も務めるなど第一線で活動する中で、気候変動による積雪量の変化や自然環境への影響を肌で実感。信州登山案内人(長野県認定ガイド)として自然と共生する暮らしを実践し、ラジオパーソナリティやSNSを通じて環境や地域の未来について発信を続けている。
Instagramアカウント:@sachitanaka

写真:mush(植田めぐみ)

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