2026.09.02 環境問題

環境問題ランキング|一番深刻なのはどれ?専門家900人が出した答え 

「地球温暖化と生物多様性の喪失、結局どちらが深刻なの?」——そう思ったことはないでしょうか。実は世界経済フォーラム(WEF)は、環境問題だけでなく、経済・地政学・社会・技術など、あらゆる分野のリスクを対象に専門家900人超へ調査を行っています。その結果を見ると、同じ専門家に「2年後」「10年後」それぞれの深刻度を聞いたとき、環境問題が他の分野を抑えて上位に来るかどうかが大きく変わることがわかりました。この記事では、WEFの調査データをもとに「環境問題ランキング」を紐解きながら、なぜ単純に順位をつけられないのか、そして意外と語られていない"4番目の危機"天然資源の枯渇についても、わかりやすく解説します。

【この記事でわかること】

  • ・世界の専門家900人超が回答した、WEFの調査による環境問題ランキング
  • ・なぜ「2年後」と「10年後」で環境リスクの順位が大きく変わるのか
  • ・異常気象や生物多様性の喪失に次ぎ、WEF調査で"4番目の危機"とされる天然資源の枯渇とは
  • ・なぜ環境問題に単純な順位をつけることが難しいのか

第1章 「一番深刻」な環境問題はあるのか?

ニュースやSNSでは、地球温暖化、海洋汚染、生物多様性の喪失など、さまざまな環境問題が取り沙汰されています。そもそも「環境問題」と一口にいっても、その種類はさまざまです。

地球温暖化や海洋汚染、森林破壊、生物多様性の損失など、今起きている環境問題の種類や原因、被害については、こちらの記事で一覧にまとめています。

では、こうした環境問題の中で「結局、どれが一番深刻なのか?」と聞かれたら、どう答えればよいのでしょうか。

この問いに答える手がかりになるのが、世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している「グローバルリスク報告書」です。WEFでは、世界中の専門家を対象に、環境問題だけでなく、経済・地政学・社会・技術などを含むさまざまなリスクについて、その深刻度を評価する調査を行っています。その結果を見ると、「2年後」と「10年後」では、専門家が特に深刻だと評価するリスクが大きく変わることがわかります。

では、実際に環境問題はどのくらい上位に入っているのでしょうか。次の章から、WEFの調査結果をもとに詳しく見ていきましょう。

第2章 環境問題ランキング——世界の専門家900人が出した答え

2-1 WEFグローバルリスク報告書とは

WEFグローバルリスク報告書とは

世界経済フォーラム(WEF)は、スイスのダボスで毎年開催される年次総会(通称「ダボス会議」)で知られる国際的な非営利組織です。 WEFは毎年1月、各国の政府・企業・学術機関などから集まった専門家の意見をもとに「グローバルリスク報告書(Global Risks Report)」を発表しています。

この報告書は、気候変動から地政学的な対立、AIのリスクまで、世界が直面するあらゆる種類のリスクを一つの土俵に並べて比較できる、数少ない資料の一つです。環境問題だけでなく、経済・地政学・社会・技術リスクも含めた33種類のリスクを対象としています。

WEFはこの33種類のリスクを、経済・環境・地政学・社会・技術という5つのカテゴリーに分類しています(※1)。本記事で「環境リスク」と呼んでいるのは、このうち「環境」カテゴリーに属するリスク(異常気象、生物多様性の喪失、天然資源の枯渇など)のことです。

※1出典: WEF「Global Risks Report 2025|Appendix A: Definitions and Global Risks List

2-2 調査の中身——GRPS(Global Risks Perception Survey)

この報告書の土台になっているのが、「グローバルリスク認識調査(GRPS)」と呼ばれるアンケート調査です。2025年版では、2024年9月から10月にかけて実施され、1,112件の回答のうち、一定の基準を満たした909人分(学術・ビジネス・政府・国際機関・市民社会など幅広い分野の専門家)の回答が採用されました(※2)。

回答者は、33種類のリスクについて「今年」「2年後」「10年後」という3つの時間軸で、それぞれの深刻度を評価します。この「複数の時間軸で聞く」という設計こそが、次の章で説明する「順位が変わる」現象のカラクリです。

※2出典:WEF『Global Risks Report 2025』Appendix B

第3章 なぜ「2年後」と「10年後」で順位が変わるのか

なぜ「2年後」と「10年後」で順位が変わるのか

WEFの調査結果を見ると、面白いことがわかります。それは、環境リスクは「10年後」の予測ではほぼ独占的に上位を占める一方、「2年後」の予測では他のリスクに埋もれてしまう、ということです。

3-1 「10年後」ランキングは環境問題の独占状態

2024年版の報告書では、10年後リスクの上位4位を「①異常気象、②地球システムの重大な変化、③生物多様性の喪失、④天然資源の枯渇」と環境リスクが独占しました(※1)。5位でようやく環境以外のリスク(偽情報・誤情報=技術リスク)が登場する、という並びです。

2025年版でも、この状態は変わっていません。上位4位は「①異常気象、②生物多様性の喪失・生態系の崩壊、③地球システムのの重大な変化、④天然資源の枯渇」と、2024年版と同じ4項目(②③のみ順位が入れ替わり)がそのまま並び、この年もやはり上位4位はすべて環境問題という結果だったのです(※2)。

※1出典:WEF『Global Risks Report 2024』
※2出典:WEF『Global Risks Report 2025』(Key Findings)

3-2 「2年後」ランキングでは環境リスクが埋もれる

ところが2年後のランキングになると、様子は一変します。上位に来るのは偽情報・誤情報、社会の分断、サイバーセキュリティ、武力紛争といった、環境とは異なる種類のリスクです。環境リスクでは、異常気象が2位、汚染が6位に入っています(※1)。

2025年版でも、偽情報・誤情報は2年連続で2年後リスクの首位に立っています。2025年に最も深刻とされたリスクとしては、初めて「国家間の武力紛争」が選ばれ、前年首位だった異常気象はそれに次ぐ2位となりました(※2)。

このように、どの時間軸で見るかによって、専門家が特に深刻だと考えるリスクは変わるのです。

第4章 上位4リスクを俯瞰する

ここからは、2025年版の10年後ランキングで上位に挙げられた4つの環境リスクを、簡単に見ていきましょう。①〜③はすでに詳しく解説した記事があるので、気になる方はあわせてご覧ください。

4-1 ①異常気象

大雨・干ばつ・熱波といった極端な気象現象は、2025年版でも10年後リスクの1位、かつ「今年最も深刻なリスク」の2位にランクされました(※1)。異常気象については、原因や仕組みを以下の記事で詳しく解説しています。

4-2 ②生物多様性の喪失・生態系の崩壊

2025年版で2位に入ったのが、生物多様性の喪失・生態系の崩壊です。2024年版では3位でしたが、1つ順位を上げました(※1)。原因や絶滅危惧種の実例については、以下の記事をご覧ください。

4-3 ③地球システムの重大な変化

3位は「地球システムの重大な変化」です。気候変動によって、氷床の融解や海流の変化など、地球規模のシステムが後戻りできない状態(臨界点/ティッピングポイント)を超え、長期的かつ不可逆的な変化が生じるリスクを指します(2024年版では、このリスクは2位でした)。 この臨界点については、地球温暖化・気候変動の記事内でも触れています。

4-4 ④天然資源の枯渇

そして4位に位置づけられているのが、「天然資源の枯渇」です。

ここでいう「天然資源の枯渇」は、水や食料などの供給不足を含め、自然資源を持続的に利用できなくなるリスクを指します。WEFでは、人間による資源の過剰利用や管理不足、気候変動などによって、食料や水の供給不足が生じるリスクとして定義されています。国連環境計画(UNEP)が設置する国際資源パネル(IRP)の報告書によると、地球全体の資源採取量はこの50年で3倍に増加しており、このままのペースが続けば2060年までに2020年比でさらに60%増加すると見込まれています (※1)。

この資源消費には、大きな偏りがあります。低所得国は高所得国と比べて、消費する資源量が6分の1、それに伴う気候への影響も10分の1にとどまるとされているのです(※1)。つまり、天然資源の利用量や、それに伴う環境への影響には地域によって大きな偏りがあるのです。こうした資源利用の格差も、資源問題を考えるうえで重要なポイントです。

さらに見落とされがちなのが、脱炭素の取り組み自体が、別の形で天然資源への需要を押し上げているという側面です。太陽光・風力といった再生可能エネルギー設備やEV(電気自動車)のバッテリーには、リチウム・コバルト・ニッケルといった鉱物資源が欠かせません。資源エネルギー庁の資料では、EVを100万台製造するために必要なリチウム・コバルトの量は、現在の国内需要量とほぼ同程度にのぼると試算されています(※2)。脱炭素を進めることで、こうした鉱物資源への需要がさらに高まる可能性があります。天然資源の問題には、このように環境対策と資源需要が複雑に関係する側面があります。

※1出典:UNEP国際資源パネル『Global Resources Outlook 2024』
※2出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラル実現に向けた鉱物資源政策」

第5章 なぜ「これが一番」と言えないのか——連鎖する環境問題

ここまで見てきた4つのリスクは、実はそれぞれ独立した問題ではなく、互いに影響し合っています。気候変動が進めば異常気象が増え、異常気象は生態系を壊し、生態系の崩壊は資源の枯渇にもつながる——という具合です。

WEFの報告書でも、環境リスクは「他のリスクを引き起こしたり、他のリスクから影響を受けたりする度合いが高い」と位置づけられています(※1)。だからこそ、環境問題を「これが一番深刻」と単純に順位付けするだけでは、問題同士のつながりを捉えきれません。

こうした環境問題同士の連鎖のメカニズムについては、以下の記事で詳しく解説しています。

※1出典:WEF『Global Risks Report 2024』

第6章 よくある質問(FAQ)

Q1. 環境問題の中で一番深刻なものはどれですか?

A. WEFの調査では、10年後という長期の視点で見ると、異常気象・生物多様性の喪失・地球システムの危機的変化・天然資源の枯渇が上位を占めます。ただし2年後という短期の視点では、環境リスクの多くが他のリスクに埋もれてしまいます。つまり「どの時間軸で見るか」によって答えが変わるため、単純に一つを「一番」と決めることは難しいとされています。

Q2. なぜ短期と長期でリスクの順位がこんなに変わるのですか?

A. 環境リスクの多くは、長期的に深刻化すると考えられています。実際、WEFの2025年版では、異常気象は2年後のランキングでも2位に入っていますが、生物多様性の喪失・生態系の崩壊や地球システムの危機的変化、天然資源の枯渇は、10年後のランキングで上位に入っています。このように、リスクによって短期と長期で評価が大きく変わることが、ランキングの違いにつながっています。

Q3. 天然資源の枯渇は、他の環境問題とどう違うのですか?

A. 地球温暖化や生物多様性の喪失が「気候」や「生態系」という単一のテーマを扱うのに対し、天然資源の枯渇は水・森林・鉱物・化石燃料など複数の資源にまたがる、より広いテーマです。さらに、脱炭素に必要な鉱物資源の需要増加のように、他の環境問題への対策自体が新たな資源需要を生む、という複雑な側面も持っています。

Q4. WEFのグローバルリスク報告書は、どれくらい信頼できるものですか?

A. 学術・ビジネス・政府・国際機関・市民社会など幅広い分野の専門家900人超の意見を集計したものであり、一つの機関や個人の見解ではなく、多様な立場からの集合知に基づいている点が特徴です。ただし、あくまで「専門家がどう認識しているか」を示す調査であり、科学的な予測モデルそのものとは性質が異なる点には留意が必要です。

Q5. 環境問題への対応が後回しにされやすいのはなぜですか?

A. 一因として、今回見てきたような「短期的には他のリスクの方が深刻に見える」という認識のギャップが挙げられます。政治や経済の意思決定では、目の前の社会・経済・地政学的な課題への対応が求められる一方、環境リスクは長期的な視点で評価すると深刻さが際立つ傾向があります。そのため、短期的な課題への対応と、将来の環境リスクへの備えを両立することが重要です。

第7章 まとめ

WEFグローバルリスク報告書によると、環境問題は10年後という長期の視点で見ると上位のほとんどを占める一方、2年後という短期の視点では他のリスクに埋もれてしまいます。「一番深刻な環境問題はどれか」という問いに単純な答えがないのは、こうした時間軸によるギャップと、環境問題同士が複雑に連鎖し合っているためです。

そして、異常気象・生物多様性の喪失・地球システムの重大な変化と並んで上位に挙げられている天然資源の枯渇は、「脱炭素の取り組み自体が新たな資源需要を生む可能性がある」という、意外と知られていない落とし穴を持つ問題でもあります。

一つの問題だけを切り取って「これが一番深刻」と考えるのではなく、複数のリスクが絡み合っているという前提に立つこと。それが、環境問題を正しく理解するための第一歩になるはずです。

グリーンアライアンス事務局

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