2026.09.24 環境問題

砂漠化と日本の関わり|内モンゴルなどで植林に取り組んだ企業・NGO実例6選

「砂漠化」と聞くと日本には関係のない話に思えるかもしれません。しかし、大気や食卓を通じて、私たちの暮らしは世界の砂漠化とつながっています。また、内モンゴルなど現地に入り、緑化活動に取り組んできた日本企業やNGOもあるのです。この記事では、砂漠化と日本のつながりを簡単に整理したうえで、現地で活動する日本発の取り組みを実例とともに紹介します。

【この記事でわかること】

  • ・砂漠化と日本をつなぐ「大気」「食卓」という2つの経路
  • ・内モンゴルなどの現地で、日本の企業・NGOが行っている植林・緑化活動の実例
  • ・それぞれの団体がどんな規模で、どんな成果をあげているか
  • ・個人が現地の活動を知る・関わる方法

第1章 砂漠化と日本——「大気」「食卓」「植林活動」の先にあるつながり

砂漠化対処条約(UNCCD)は、砂漠化を「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥半湿潤地域における、気候の変動及び人間活動を含む種々の要因による土地の劣化」と定義しています(※)。日本国内においては、砂漠化対処条約が定義する「砂漠化」が大きな問題となっているわけではありませんが、決して「間接的」にだけ関係しているというわけではないのです。

まず、中国大陸から飛来する黄砂という形で、「大気」を通じてつながっています。また、輸入食料という形で、「食卓」を通じてもつながっています。

そしてもう一つ、あまり知られていないつながりがあります。それが、内モンゴルなどの現地に入り、長年にわたって植林・緑化活動を続けてきた日本のNPO・NGO・企業の存在です。次の章から、この3つのつながりを順に見ていきましょう。

なお、「そもそもなぜ砂漠化が起きるのか」「一度始まるとなぜ止まりにくいのか」といった原因や仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。

※出典:環境省「国際的な砂漠化対処」

第2章 砂漠化と日本をつなぐ2つの経路

2-1 【大気】黄砂と大気汚染

黄砂は、ユーラシア大陸内陸部の乾燥地域で強風によって巻き上げられた土壌・鉱物粒子が、偏西風に乗って日本まで運ばれてくる現象です。気象庁の観測データによると、1967年から2023年までの黄砂観測日数には年ごとの変動が大きく、統計的に「増えている」とも「減っている」とも言い切れない状況にあります(※1)。ただし発生自体が止まっているわけではなく、飛来時には呼吸器疾患などのリスクが高まることが指摘されています。

大気汚染が日本の暮らしに与える影響については、以下の記事で詳しく解説しています。

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2-2 【食卓】食料輸入と世界の農地の喪失

砂漠化や土地劣化は、世界の食料生産にも影響を及ぼす問題です。国連砂漠化対処条約(UNCCD)が2022年に公表した報告書『Global Land Outlook 2』によると、氷床などを除く世界の陸地の最大40%がすでに劣化しているとされています(※2)。

日本の食料自給率は、令和7年度でカロリーベース37%にとどまっています(※3)。残りの多くを輸入に頼っている以上、世界のどこかで進む土地の劣化は、輸入価格の上昇や調達の不安定化という形で日本にも影響しうる問題です。

日本のエネルギー自給率については、以下の記事で詳しく解説しています。

※1出典:気象庁「黄砂観測日数の経年変化」
※2出典:UNCCD『Global Land Outlook 2nd edition』
※3出典:農林水産省「令和7年度食料自給率を公表します」

第3章 【植林活動】日本発、現地で進む砂漠化対策の実例6選

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大気や食卓とは別に、もう一つの形で日本と砂漠化はつながっています。それが、内モンゴルなどの現地に入り、長年にわたって植林・緑化活動を続けてきた日本のNPO・NGO・企業の存在です。

3-1 内モンゴル沙漠化防止植林の会(千葉県のNPO)

千葉県を拠点とするNPO法人です。内モンゴル自治区ホルチン地方において、地域住民の生活水準向上のための経済林創生や環境教育を一体化した植林技術の普及を目的に活動しています。

これまでに15の中学校での環境教育のための植林、300家族の経済林創生活動の支援、延べ5,000ヘクタールの砂地の緑化、50キロメートルにわたる公道の防風林の整備などを実施し、日本から延べ980名の植林ボランティアが参加してきました(※1)。

3-2 地球緑化センター(NGO)

1993年、砂漠緑化に取り組む有志によって設立されたNGOです。同年から中国科学院の協力要請を受け、中国・内モンゴルの砂漠化地域において植林を開始し、市民の幅広い参加による緑化活動を推進しています。

若者の長期農山村ボランティア「緑のふるさと協力隊」や、児童・生徒への環境教育活動なども手がけており、2000年には朝日新聞社主催「第1回明日への環境賞 森林文化特別賞」を受賞しています(※2)。

3-3 トヨタ自動車(中国・河北省)

トヨタ自動車は、中国科学院中日科技与経済交流協会、河北省林業局、地球緑化センターと共同で、河北省豊寧満族自治県において「21世紀中国首都圏環境緑化モデル拠点」共同事業を実施してきました。この地域は北京市の北方約180キロメートルに位置し、北京を襲う砂嵐の発生源の一つとされています。2001年から8年間にわたり、地元住民やトヨタ関係者、NPOのボランティアが加わって、合計2,800ヘクタール(東京ドーム約600個分)の植林を行いました(※3)。

3-4 ホンダ(内モンゴル自治区ウランチャプ市)

本田技研工業(中国)投資有限公司は、2008年から内モンゴル自治区ウランチャプ市にある友誼ダム周辺地域で「内モンゴル植林活動」を開始しました。この地域は人口の急増や過放牧などの人為的な要因により砂漠化が急速に進んでいた場所です。5年間で約467ヘクタール(東京ドーム約100個分)に約70万本を植樹し、2013年からはHondaに関連する16の合弁会社が参画する新たな5か年の合同植林プロジェクトへと引き継がれました(※4)。

3-5 富士フイルム(内モンゴル自治区ホルチン砂漠)

富士フイルム労働組合は1998年から、中国・内モンゴル自治区ホルチン砂漠などでの植林ボランティア活動に取り組んできました。2007年からは富士フイルム(中国)投資有限公司も本格的に参加し、労使協働の活動として定着しています。新型コロナウイルス感染症の影響で現地訪問を見合わせた期間には、スマートフォンアプリを活用したオンラインの環境教育プログラムを実施するなど、形を変えながら活動を継続してきました(※5)。

3-6 三菱電機(内モンゴル自治区ウランチャブ市)

三菱電機グループは、中華環境保護基金会と協力し、内モンゴル自治区ウランチャブ市での緑化活動を開始しました。今後5年間で約4万本を植える計画で、活動初日にはグループ12社から30名の従業員が参加し、現地関係者とともにアブラマツ300本を植樹しました(※6)。

※1出典:環境省「内モンゴル沙漠化防止植林の会」活動報告
※2出典:JICA地球ひろば「地球緑化センター」
※3出典:トヨタ自動車「トヨタ自動車、中国での砂漠化防止緑化プロジェクト」
※4出典:Honda「内モンゴルの植林活動」
※5出典:富士フイルム「植林ボランティア」
※6出典:三菱電機「中国での新緑化プロジェクトがスタート」

第4章 よくある質問(FAQ)

Q1. 個人が現地の植林活動に参加することはできますか?

A. 可能です。地球緑化センターでは、現在も海外での植林ボランティア「緑の親善大使」を実施しています。以前行っていた中国での植林活動は、新型コロナウイルス感染症の流行を機に一区切りとなり、現在はモンゴル国で植林活動を行っています(※1)。企業が主催するボランティア植林にも、従業員の家族や地域住民が参加できるケースがあります。

Q2. 植林は本当に砂漠化対策として効果があるのですか?

A. 一定の効果が確認された事例があります。たとえば中国東北部のホルチン砂漠で20年間にわたり実施されてきた緑化プロジェクトでは、2,818ヘクタール、728万本以上の植林が行われ、活着率は64.0%と報告されています。 緑地の回復にともない、在来植生の自然回復やきのこなどの林産物、ウサギやキジといった鳥獣類も見られるようになり、生態系が回復しつつあることが確認されています(※2)。ただし植林だけで砂漠化そのものが止まるわけではなく、過放牧・過耕作といった原因側への対策と組み合わせることが重要とされています。

Q3. 黄砂は今後も増えていくのですか?

A. 気象庁の統計では、1967年から2023年までの観測データにおいて、有意な増加・減少の傾向は確認されていません(※3)。年による変動が大きいのが特徴です。黄砂と日本への影響については、以下の記事で詳しく解説しています。

※1出典:JICA地球ひろば「地球緑化センター」
※2出典:環境省「砂漠化する地球-その現状と日本の役割-」
※3出典:気象庁「黄砂観測日数の経年変化」

第5章 まとめ

砂漠化は、日本国内で直接進行している問題ではありません。しかし大気や食卓という経路を通じて、私たちの暮らしと静かにつながっています。そしてもう一つ、内モンゴルをはじめとする現地で、日本のNPOや企業が長年にわたって続けてきた植林・緑化活動を通じても、つながっているのです。

砂漠化は「遠い国の出来事」であると同時に、日本が長く関わり続けてきた課題でもあります。今回紹介した実例のなかに興味を持てる活動があれば、ぜひ詳しく調べてみてはいかがでしょうか。

執筆 
グリーンアライアンス事務局

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