日本のエネルギー自給率は16.4%(2024年度速報値)と、G7各国の中で最も低い水準にあります。しかし「自給率が低い」と言われても、暮らしにどう関わるのかピンとこない方も多いのではないでしょうか。実はこの数字、電気料金やもしもの時のエネルギー供給の安定性に直結するものでもあります。
本記事では、資源エネルギー庁や環境省の一次データをもとに、日本のエネルギー自給率が低い理由と、放置した場合に起きるリスク、国の対策と私たちにできることを整理してお伝えします。
【この記事でわかること】
- ・日本のエネルギー自給率の現状と、世界との比較
- ・自給率が低い3つの理由
- ・自給率が低いままだと起きる具体的なリスク
- ・記事によって自給率の数字が違って見える理由
- ・国の対策と、今日から始められる行動
第1章 日本のエネルギー自給率とは?現状を数字で見る
日本のエネルギー自給率は16.4%(2024年度速報値)と、主要国の中でも突出して低い水準にあります。まず、「エネルギー自給率」とはどのような指標なのか、基本から押さえておきましょう。
エネルギー自給率とは、国内で消費するエネルギーのうち、自国内でまかなえる量の割合を示す指標です。石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料だけでなく、原子力発電や太陽光・風力といった再生可能エネルギーによる発電量も含めて算出されます。エネルギー安全保障を考えるうえで、非常に重要な指標のひとつです。
資源エネルギー庁によると、日本のエネルギー自給率は16.4%(2024年度速報値)(※1)。国際比較の際は各国のデータ更新にタイムラグがあるため、直近で比較可能な2022年のデータで見てみましょう。G7各国と比較すると、日本の自給率の低さが浮き彫りになります。
| 国名 | エネルギー自給率(2022年) |
|---|---|
| カナダ | 188.60% |
| 米国 | 106.70% |
| フランス | 49.30% |
| 日本 | 15.30% |
こうして数字を並べてみると、日本が置かれた状況がよりリアルに伝わってくるのではないでしょうか。カナダは国内消費量の1.8倍以上ものエネルギーを生産できる一方、日本はエネルギーの約85%を海外からの輸入に頼っているのが実情です。
国際的に見ても、日本の立ち位置は厳しいと言わざるを得ません。資源エネルギー庁も、日本の自給率は他のOECD加盟国と比べて低い水準にあると位置づけています(※1)。とりわけ原油は約99.7%を輸入に依存しており、100リットルのうち国内で調達できるのはわずか0.3リットルにすぎません(※2)。資源小国と呼ばれる日本の課題が、この数字からもはっきりと見て取れます。
※1出典:資源エネルギー庁「2.安定供給」(日本のエネルギー2025年度版)
※2出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「石油輸入調査」
第2章 日本のエネルギー自給率はなぜ低い?理由3選
エネルギー自給率が低い背景には、日本の地理的な条件と、これまでの歴史的な経緯が関係しています。順に見ていきましょう。
2-1 ①資源が乏しく、化石燃料の大半を海外に頼っている
そもそも日本は、石油・天然ガス・石炭の国内生産がごく限られています。原油は99.7%、天然ガスは97.9%(※1)を輸入がまかなっており、石炭もほぼ全量を海外からの調達に頼っています。
2-2 ②東日本大震災を境に、原子力発電が縮小した
流れが大きく変わったのは、2011年3月の東日本大震災です。この震災をきっかけに、国内の原子力発電所はいったんすべて停止しました。震災前まで自給率を支えていた原子力の比率は大きく下がり、その分を補う形で、火力発電向けの燃料輸入が増えていきました。
2-3 ③再生可能エネルギーは、まだ伸びしろの段階
自給率を押し上げる手段として期待されているのが、太陽光や風力といった再生可能エネルギーです。2024年度の電源構成を見ると、火力67.5%、再生可能エネルギー(水力含む)23.1%、原子力9.4%(※2)。輸入に頼らず国内で作れる再エネへとシフトしていく流れは、世界的にも進んでいます。
発電の仕組みについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
※1出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2025年度版」
※2出典:経済産業省「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)」
第3章 自給率が低いままだと何が起きる?現状のリスク
自給率の低さは、数字だけの話ではありません。私たちの暮らしにも関わる、具体的なリスクとして見ていきましょう。
まず挙げられるのが、エネルギー安全保障上のリスクです。輸入先の国や地域で紛争や供給トラブルが起きれば、燃料の調達コストが上昇し、その影響は電気料金にも及びます。実際、国際情勢の変化によって家庭の光熱費が左右されるケースもこれまで見られてきました。
もう一つは、脱炭素目標との両立という課題です。化石燃料の燃焼は地球温暖化の主な原因の一つであり、輸入に頼る構造が続く限り、2050年のカーボンニュートラル実現へのハードルは高いままとなりそうです。
こうした課題を踏まえ、環境省が後押ししているのが、自立分散型のエネルギーシステムづくりです。地域の再生可能エネルギーや蓄電池、自営線を組み合わせることで、地域単位でのエネルギー自給率向上と、災害に強いまちづくりを目指す取り組みです(※)。
地球規模の環境問題については、以下の記事で一覧にして取り上げています。
第4章 なぜ記事によって自給率の数字が違うのか
ここまで主に「16.4%」という数字を使ってきましたが、他の記事やサイトを見ると「13.3%」「約10%」「4%」など、違う数字に出会うこともあるはずです。これは間違いではなく、算出の前提がそれぞれ異なるためです。
- 算出年度の違い
エネルギー自給率は、年によって変動します。震災後の原発再稼働状況や再エネの導入量によって、2021年度・2022年度・2023年度では見える数字が変わってくるのです。 - 原子力を含むかどうかの違い
資源エネルギー庁が発表している16.4%(2024年度速報値)は、原子力発電分を「準国産エネルギー」として含んだ数字です (※)。一方、原子力を除いたベースで算出すると、自給率はぐっと低い数字になります。同じ「自給率」という言葉でも、何を母数に取るかで見え方がまったく変わってしまう、その典型例と言えるでしょう。
数字を目にしたときは、「何年度のデータか」「原子力を含むかどうか」の2点をチェックするクセをつけておくと、記事ごとの違いに振り回されずに済みます。
※出典:資源エネルギー庁「2.安定供給」(日本のエネルギー2025年度版)
第5章 日本のエネルギー自給率を高めるための国の対策
自給率の低さは、国としても重く受け止めている課題です。その対策として、いくつかの取り組みが進められています。
まず政府はGX(グリーントランスフォーメーション)に関する方針を打ち出しました。脱炭素と経済成長、エネルギーの安定供給を同時に実現するという方針で、エネルギー政策の原則「S+3E」のもと、2040年度には自給率を3〜4割程度まで高めることを目標としています (※1)。現状の16.4%と比べると、まだまだ道のりは長そうです。
対策のもう一つの柱が、再生可能エネルギーの拡大です。国立環境研究所によると、太陽光発電の変換効率は量産型で十数%、高効率型になると約30%に達するといいます(※2)。地熱発電も着実に存在感を高めており、2021年時点で国内16箇所、設備容量にして約50万キロワットが稼働しています。
バイオマスエネルギーも見逃せません。地域に分散して存在する資源を活かせることから、地産地消や自給率向上にうってつけの電源として位置づけられています(※2)。太陽光・地熱・バイオマスという3つの電源を、どう組み合わせていくか。これが今後の焦点になっていきそうです。
なぜ脱炭素がここまで国を挙げた目標になっているのか、その背景が気になる方は、以下の記事もぜひあわせてご覧ください。
※1出典:経済産業省「GX2040ビジョンの概要」
※2出典:国立環境研究所「環境展望台」
第6章 私たちが今日からできること
国の政策だけでなく、一人ひとりの行動も、実は自給率に関わってきます。難しく考えず、身近なところから見ていきましょう。
- ・家庭の省エネ行動を積み重ねる(エアコンの温度設定、待機電力の見直しなど)
- ・太陽光発電やグリーン電力証書など、再生可能エネルギーの選択肢を検討する
- ・エシカルな消費を意識し、エネルギーを大切に使う習慣を持つ
こうした行動は、一つひとつを見れば小さなことかもしれません。それでも、社会全体に広がっていけば、輸入への依存度を少しずつ下げる力になっていくはずです。
第7章 よくある質問(FAQ)
Q1. エネルギー自給率とは、具体的に何を指しますか?
A. 国内で消費するエネルギーのうち、自国で確保できる量の割合を指します。化石燃料だけでなく、原子力(準国産エネルギー)や再生可能エネルギーによる発電分も含まれます (※1)。
Q2. 日本のエネルギー自給率が低いのは、いつからですか?
A. もともと資源に乏しく、低い水準ではありました。それが2011年の東日本大震災後、原子力発電の停止によってさらに下がっています。近年は再エネ導入が進んだこともあり、緩やかな回復傾向にあります。
Q3. エネルギー自給率が0%になることはありますか?
A. 理論上は考えにくいところです。水力・地熱・太陽光・バイオマスなど、国内で確保できるエネルギー源が日本にはあるため、完全にゼロになることは想定されていません。ただし、化石燃料の輸入が滞れば、自給率はさらに下がることになります。
Q4. 再生可能エネルギーだけで、自給率100%を達成できますか?
A. 現時点では、簡単なことではありません。天候による発電量の変動や、蓄電・送電網の整備といった課題が、まだ残されています。
Q5. 原子力発電を再稼働すれば、自給率は上がりますか?
A. 数字の上では上がります。原子力は国内で発電できるエネルギーとして、自給率の計算に含まれるためです。ただし再稼働の是非は、安全性や地域の合意形成など、自給率とは別の論点を含んでいるため、この議論だけで判断できるものではありません。
Q6. 個人の家庭でも、エネルギー自給率に貢献できますか?
A. 太陽光発電の導入や、グリーン電力証書の購入といった形で、貢献することは可能です。一件あたりの効果は小さくても、省エネ行動とあわせて積み重ねていくことが、輸入依存度を下げる一歩になります。
※1出典:資源エネルギー庁「2.安定供給」(日本のエネルギー2025年度版)
第8章 まとめ
日本のエネルギー自給率は16.4%(2024年度速報値)と、G7の中でも低い水準にあります。資源の乏しさや原子力発電の縮小がその背景にあり、このまま放置すれば、エネルギー安全保障や電気料金へのリスクは続くでしょう。国はGX2040ビジョンのもと、2040年度に自給率3〜4割程度を見込み、再生可能エネルギーの拡大を進めています。数字の違いに惑わされず、現状を正しく理解したうえで、家庭でできることから一歩ずつ取り組んでみてください。



