2026.10.01 エネルギー

【図解】スマートグリッドとは?太陽光・蓄電池・EVとの関係や日本での取り組みを解説

「スマートグリッド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。スマートグリッドとは、電力をつくる・送る・ためる・使うさまざまな設備を、情報通信技術でつないで、電力全体を効率よく調整する仕組みです。太陽光発電や蓄電池、EVなどもつなぎながら、電気と情報を活用して電力の需給を調整します。この記事では、その仕組みから、2026年現在の日本での導入状況までわかりやすく解説します。

【この記事でわかること】

  • ・スマートグリッドとは何か、従来の電力網と何が違うのか
  • ・スマートメーター・EMS・太陽光・蓄電池・EV・VPP・DRがどうつながっているのか
  • ・スマートグリッドによって、再エネの活用や電力の安定供給がどう変わるのか
  • ・2026年現在、日本でどこまで導入が進んでいるのか、今後の課題は何か

第1章 スマートグリッドとは?まずは仕組みをわかりやすく解説

「スマートグリッド」という言葉を聞いたことはあっても、具体的に何を指すのかはよくわからない方も多いでしょう。

スマートグリッドとは、電力をつくる・送る・ためる・使うさまざまな設備を、情報通信技術でつないで、電力全体を効率よく調整する仕組みです。発電所だけでなく、太陽光発電や蓄電池、EV、家庭や企業などもつなぎ、電気の使用量や発電量などの情報を活用します。

まずは、スマートグリッドがどのような仕組みなのか、従来の電力網との違いとあわせて見ていきましょう。

1-1 スマートグリッドを一言でいうと?

スマートグリッドを簡単にいうと、「さまざまな設備をつないで、電気と情報を使いながら、電力全体をうまく調整する仕組み 」です。発電所でつくった電気を届けるだけでなく、家庭や企業の太陽光発電、蓄電池、EVなども電力の仕組みにつなぎ、電気の使用量や発電量などの情報を活用します。

たとえば、電気が余りやすい時間帯には蓄電池を充電したり、EVを充電したりするなど、状況に合わせて電気の使い方を調整できます。

スマートグリッド全体のイメージ図

スマートグリッド全体のイメージ図

では、なぜ「スマート」なのでしょうか。

それは、電気の使用量や発電量などの情報をリアルタイムで把握し、その情報をもとに設備をスマートに管理・制御できるからです。

つまり、ただ電気を送るだけではなく、情報を使って電力の流れを賢く調整する。これが「スマートグリッド」の「スマート」につながっています。

1-2 従来の電力網と何が違う?

従来の電力網では、発電所でつくった電気を家庭や企業へ届けることが基本でした。

一方、スマートグリッドでは、太陽光発電や蓄電池、EVなど、家庭や企業にあるさまざまな設備も電力の仕組みの一部として活用します。さらに、スマートメーターなどを使って電気の使用状況を把握し、その情報をもとに電力の需要と供給を調整します。

つまり、「電気をつくって届ける」だけでなく、「さまざまな設備と情報をつないで、電力全体を調整する」という点が、従来の電力網との大きな違いです。

1-3 なぜ今、スマートグリッドが必要なの?

スマートグリッドが注目される背景の一つが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及です。

再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変わります。そのため、導入が増えるほど、電力の需要と供給を柔軟に調整することが重要になります。そこで、蓄電池やEVなどを活用したり、電気を使う時間を調整したりしながら、電力全体のバランスを整える仕組みが求められています。

スマートグリッドは、こうした設備や情報を活用して、再生可能エネルギーを取り入れながら、安定した電力供給を目指すための仕組みの一つなのです。

第2章 スマートグリッドの仕組み|何と何がつながっている?

スマートグリッドのポイントは、発電所だけでなく、家庭や企業にあるさまざまな設備をつなぎ、電気と情報の両方を活用して電力の需給を調整することです。では、具体的にどのようなものがつながり、それぞれがどのような役割を果たしているのでしょうか。

2-1 電気と情報を双方向にやり取りする

スマートグリッドでは、発電所や家庭・企業など、さまざまな場所にある設備をつなぎ、電気の流れだけでなく、電気に関する情報もやり取りします。

たとえば、家庭の太陽光発電や蓄電池、EVなどは、電力をつくったり、ためたり、使ったりできるDER(分散型エネルギーリソース)として、電力の需給調整にも活用できます。そのためには、まず「今、どれくらい電気が使われているのか」を把握する必要があります。

そこで活躍するのがスマートメーターです。スマートメーターは電気の使用量を計測し、その情報を送ることができます。

さらにEMS(エネルギー・マネジメント・システム)が、こうした情報をもとに設備の運転を管理・制御します。

そして、複数のDERをまとめて制御するVPPや、電気を使う量やタイミングを調整するDRなどによって、電力の需給を調整します。

このように、電気をつくる・ためる・使う設備と、それらを把握・管理・調整する仕組みを情報通信技術でつなぎ、電力全体を効率よく調整するのがスマートグリッドなのです。

スマートグリッド ー電気と情報をつないで、電力全体を効率よく調整する仕組みー

2-2 スマートメーター・EMS・VPPが電力をコントロールする

スマートグリッドを支える設備や仕組みには、それぞれ異なる役割があります。

スマートメーターは「見る」役割です。電気の使用量を計測し、その情報を通信します。これによって、いつ、どれくらい電気が使われているのかを把握できます。日本では2014年度からスマートメーターの導入が始まり、現在は原則としてすべての需要家への設置が進んでいます。さらに、双方向通信などの機能を強化した「次世代スマートメーター」への切り替えも予定されており、2025年度から順次導入が始まり、2030年頃までに移行が完了する見込みです(※1)。

EMSは「管理する」役割を担います。電気の使用状況や発電量などの情報をもとに、蓄電池や空調などの設備を管理・制御します。近年は、AIを活用してEMSの制御精度をさらに高める動きも進み、2026年3月には資源エネルギー庁が「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」を公表。EMSの導入費用を補助する制度(上限1億円)の公募も予定されています(※2)。

こうしたスマートメーターやEMSを含むさまざまな設備をまとめ、電力の調整に活用するのがVPP(バーチャルパワープラント)です。家庭や企業などに分散している太陽光発電や蓄電池などをまとめて制御し、ひとつの発電所のように活用します。DR(ディマンド・リスポンス)は、電力の需要を調整する仕組みで、電力が不足しそうなときには電気の使用量を減らしたり、電力が余る時間帯には電気を使うよう促したりします。

つまり、

スマートメーターで「見る」
→ EMSで「管理する」
→ VPP・DRで「調整する」

というように、それぞれが役割を分担しながら、電力の需給調整を支えているのです。

※出典1:資源エネルギー庁「次世代スマートメーター制度検討会 フォローアップの進め方について」(2021年12月17日、資料3)
※出典2:資源エネルギー庁「『デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き』を公表しました」(2026年3月3日)

第3章 太陽光・蓄電池・EVはスマートグリッドとどう関係する?

スマートグリッドでは、発電所だけでなく、家庭や企業にある太陽光発電・蓄電池・EVなども電力の仕組みの一部として活用します。これらは「分散型エネルギーリソース(DER)」と呼ばれ、電気をつくったり、ためたり、使ったりする設備として、電力の需給調整にも活用されています。

たとえば、太陽光発電で電気がたくさんつくれる時間帯に、家庭で使い切れない電気があったとします。その電気を蓄電池にためたり、EVを充電したりすることで、発電した電気を有効に活用できます。反対に、電力が不足しやすい時間帯には、蓄電池にためた電気を使ったり、EVの充電時間をずらしたりすることで、電力の需要と供給を調整できます。

このように、太陽光・蓄電池・EVは、それぞれ単独で使うだけでなく、電力の仕組みにつながることで、電力全体の調整にも役立つ設備になるのです。

なお、太陽光発電や蓄電池については、以下の記事で詳しく解説しています。

ここでは、「太陽光・蓄電池・EVも、つながることで電力全体の調整に活用できる」という点を押さえておきましょう。

第4章 スマートグリッドのメリット|電力はどう変わる?

ここまで見てきたように、スマートグリッドでは、さまざまな設備と情報をつなぎながら電力の需給を調整します。では、この仕組みによって、電力はどのように変わるのでしょうか。

4-1 再生可能エネルギーを活用しやすくなる

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変わります。そのため、再生可能エネルギーをたくさん取り入れるには、発電量と電気の使用状況を把握しながら、電力の需給を調整することが重要です。

ここで活躍してくれるのがスマートグリッドです。スマートグリッドという仕組みでは、発電量や電気の使用状況などの情報を活用し、蓄電池やEVなども組み合わせながら、電気の使い方を調整できます。たとえば、太陽光発電で電気が余りやすい時間帯には、蓄電池やEVを充電することで、発電した電気を無駄なく活用できます。

このように、さまざまな設備をつなげて電力の需給を調整することで、天候や時間帯によって発電量が変わる再生可能エネルギーも、電力の仕組みに取り入れやすくなるのです。

4-2 電力の需給を調整しやすくなる

電気は基本的に、必要な量と発電する量を合わせながら使う必要があります。スマートグリッドの仕組みを活用すると、電気の使用状況を把握し、必要に応じて設備の運転や電気を使うタイミングを調整できます。

たとえば、電力が不足しそうなときには、蓄電池から電気を供給したり、電気を使う時間をずらしたりできます。反対に、電力が余りやすい時間帯には、蓄電池の充電やEVの充電などを促すこともできます。

こうした調整によって、電力の需要と供給のバランスを保ちやすくなるのです。

4-3 停電や災害への対応力を高められる

スマートグリッドの仕組みは、平常時の電力調整だけでなく、災害時の電力確保にも活用できます。たとえば、地域内に太陽光発電や蓄電池などの設備を備えておけば、停電時にそれらを活用して電力を確保できる場合があります。特に、地域の一部を独立した電力網として運用できる「マイクログリッド」では、災害などによる大規模停電への対応力を高めることが期待されています。

第5章 日本のスマートグリッドはどこまで進んでいる?【2026年最新】

太陽光・蓄電池・EVとの関係と住宅のイメージ

制度づくりだけでなく、実際に地域単位でスマートグリッドを構築する動きも進んでいます。ここでは、規模や段階が異なる3つの事例を紹介します。

5-1 横浜市|実証事業から始まったスマートシティ計画

2010年、経済産業省は「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として、横浜市・愛知県豊田市・京都府けいはんな学研都市・福岡県北九州市の4地域を選定しました(※1)。中でも横浜市の実証は、対象約4,000世帯という4地域最大の規模で、HEMS・BEMS・蓄電池を組み合わせた取り組みが行われました(※参考1)。

実証終了後も、横浜市は2016年に東京電力エナジーパートナー・東芝と「スマートレジリエンス・バーチャルパワープラント(VPP)構築事業」の協定を締結し、市内の小中学校に設置した蓄電池をまとめて制御する自治体VPPの取り組みへと発展させています(※2)。VPPはスマートグリッドの中核技術の一つであるため、4地域の中でもテーマにもっとも直結する展開を見せた例といえます。本章では、この横浜市の取り組みを中心に紹介します。

なお、ほかの3地域も、それぞれの特性を生かした形で取り組みを進めています。豊田市は、実証期間中の2012年から超小型EV「コムス」を使ったシェアリングサービス「Ha:mo(ハーモ)」の実証運用を開始するなど、モビリティ分野を軸に取り組みを広げました(※3)。けいはんな学研都市は、京都府を中心とした「スマートけいはんなプロジェクト」として現在も取り組みが続いています(※4)。 北九州市は、地域節電所(CEMS)を核とした八幡東区東田地区での実証を通じて、低炭素まちづくりのモデル地区として整備されました(※5)。

この4地域での実証は、日本におけるスマートグリッドの取り組みの出発点となりました。

※出典1:横浜市「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」
※出典2:横浜市「バーチャルパワープラント(VPP)構築事業」
※出典3:トヨタ自動車「豊田市で都市交通システム『Ha:mo(ハーモ)』の実証運用を開始」
※出典4:国土交通省「けいはんな学研都市」
※出典5:北九州市「北九州スマートコミュニティ創造事業」
※参考1:ITmedia EE Times Japan「スマートグリッドの実証実験、横浜市など4地域で開始へ」

5-2 小田原市|太陽光・蓄電池・EVを組み合わせた地域マイクログリッド

マイクログリッドとは、地域などの限られた範囲で電力を管理する仕組みのことです。

神奈川県小田原市では、経済産業省の「地域マイクログリッド構築事業」に採択された取り組みとして、京セラ株式会社を事業主体に、市内の公園施設に太陽光発電設備・大規模蓄電池・EV充放電器・EVを導入し、地域マイクログリッドを構築しました。平常時はこれらの設備をまとめて管理し、地域内の再生可能エネルギー活用を進める一方、災害時には系統線を切り離し、マイクログリッド内だけで電力の需給バランスを保つ仕組みになっています(※6)。

太陽光・蓄電池・EVがどのように組み合わさって一つの地域マイクログリッドになるのかがわかる事例です。

※出典6:小田原市「地産地消型の地域マイクログリッド構築事業について」

5-3 東京都|2025年開始のマイクログリッド形成推進事業

東京都は2025年6月、「脱炭素都市」の実現に向けて「マイクログリッド形成推進事業」の事業者公募を開始しました。再生可能エネルギーを地域内で面的に融通し、平常時の効率的な利用と、災害時に自立して電力を供給できる体制の両立を目指す事業で、都独自のマイクログリッド構築モデルの確立が狙いです(※7)。

国のマイクログリッド構築事業(小田原市などの事例)が全国に広がりつつあることを示す、直近の動きといえます。

※出典7:東京都産業労働局「マイクログリッド形成推進事業」

第6章 スマートグリッドの課題

スマートグリッドには多くのメリットがありますが、導入すればすぐに実現できるものではありません。設備やシステムの整備に加えて、データを扱うためのセキュリティやルールづくりも必要です。ここでは主な課題を3つあげてみます。

6-1 ①コストと設備更新

スマートグリッドには、スマートメーターや通信設備、蓄電池、制御システムなど、さまざまな設備が関係します。既存の電力設備をすべて置き換えるのではなく、現在ある設備を活用しながら新しい設備やシステムを組み合わせていく必要があるため、導入にはコストがかかります。また、設備を設置して終わりではなく、長期的な保守や更新も必要になります。

6-2 ②サイバーセキュリティ

スマートグリッドでは、電力設備だけでなく、電気の使用量や設備の状態など、さまざまなデータを通信ネットワークでやり取りします。そのため、サイバー攻撃などによってシステムが正常に動かなくなるリスクへの対策も重要です。

特に次世代スマートメーターでは、より多くのデータを扱うことになるため、セキュリティを考慮したシステムづくりが求められています。

6-3 ③制度・ルールの整備

スマートグリッドでは、電力会社だけでなく、発電設備を持つ家庭や企業、蓄電池、EV、VPP事業者など、多くの設備や事業者が関わります。そのため、「誰が設備を管理するのか」「どのように電力を調整するのか」「取得したデータをどう扱うのか」など、技術だけでは解決できないルールの整備も必要です。

スマートグリッドは、設備をつなぐだけで完成するものではなく、こうした制度や運用の仕組みも含めて整えていく必要があります。

第7章 よくある質問(Q&A)

Q1. スマートグリッドとスマートメーターは何が違う?

A. スマートグリッドは、電気と情報を活用して電力全体を効率よく管理する仕組みです。一方、スマートメーターは、電気の使用量などを計測・通信する設備です。つまり、スマートメーターはスマートグリッドを支える設備の一つ、と考えるとわかりやすいでしょう。

Q2. スマートグリッドとVPPは何が違う?

A. スマートグリッドは、発電・送配電・需要家側など、さまざまな設備をつないで電力全体を効率よく調整する仕組みです。VPPは、家庭や企業などに分散している太陽光発電、蓄電池などの設備をまとめて制御し、ひとつの発電所のように活用する仕組みです。つまり、VPPはスマートグリッドの中で活用される仕組みの一つと考えるとわかりやすいでしょう。

Q3. スマートグリッドとマイクログリッドは何が違う?

A. 大きな違いは、対象とする範囲です。スマートグリッドは、さまざまな設備や情報をつなぎ、電力システム全体を効率よく調整する仕組みです。一方、マイクログリッドは、地域などの限られた範囲で電力を管理する仕組みです(参照:5.2 小田原市の例)。地域内の再生可能エネルギーや蓄電池などを活用し、災害時の電力確保にも役立てられます。

Q4. スマートグリッドで電気料金は安くなる?

A. スマートグリッドを導入したからといって、必ず電気料金が安くなるわけではありません。ただし、電気の使用状況を把握しやすくなったり、電力の需給に合わせて電気を使う時間を調整したりすることで、電気の使い方を効率化できる可能性があります。また、時間帯によって料金が変わる電気料金メニューなどと組み合わせることで、電気料金を抑えられる場合もあります。

第8章 まとめ

スマートグリッドとは、さまざまな設備をつなぎ、電気と情報を活用して電力全体を効率よく調整する仕組みです。太陽光・蓄電池・EVなどもつながることで、再生可能エネルギーを活用しやすくなり、電力の需給調整にも役立ちます。日本でも、スマートメーターやDR・VPPなどの取り組みが進んでいます。これからは、家庭や企業にある設備も含めて、電力をみんなで柔軟に支える時代へと変わっていくでしょう。

執筆 
グリーンアライアンス事務局

LEARNは、ハンファジャパン株式会社が主宰するSDGsパートナーシップ制度「Green Alliance」の学習コンテンツです。記事は再生可能エネルギー事業に携わる社員が、公的機関の統計や一次情報をもとに執筆しています。

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