2026.08.11 エネルギー

水力発電のメリット・デメリットを徹底解説|環境への影響から他の再エネとの違いまで 

水力発電は再生可能エネルギーの中でも古くから活用され、安定した出力が魅力とされています。しかし、その裏には建設コストや生態系への影響など見過ごせないデメリットも存在します。本記事では水力発電のメリット・デメリットを公平な視点で整理し、他の再エネとの違いも解説します。

【この記事でわかること】

  • ・水力発電の仕組みと日本における発電量の現状
  • ・水力発電のメリットとデメリット
  • ・太陽光・風力など他の再エネとの違い
  • ・今後の水力発電の可能性と私たちにできること

第1章 水力発電とは?仕組みと日本の現状

水力発電は、日本において古くから活用されてきた再生可能エネルギーです。まずは基本的な仕組みと、現在の発電量における位置づけを確認しておきましょう。

1-1 水力発電の仕組み

水力発電では、川やダムにためた水を高い場所から低い場所へ落とし、その落差エネルギーで水車を回して電気を生みだします。代表的な方式として「ダム式」「流れ込み式」「水路式」「揚水式」などがあります。なお揚水式は、資源エネルギー庁の電源構成では一般の水力発電とは分けて「揚水発電」として扱われています(※1)。

▼再生可能エネルギーの全体像については、以下の記事をご覧ください。

※1出典:資源エネルギー庁|電力のピンチを救え!大活躍する『揚水発電』の役割とは?

1-2 日本における発電量比率と現状

資源エネルギー庁によると、2023年度の水力発電(揚水を除く) は日本の発電電力量全体の約7.6%(約750億kWh)を占めています(※2)。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度に水力発電の比率を8〜10%程度まで引き上げる見通しが示されています(※3)。

なお、揚水発電については全国42地点、合計約2,700万kWの発電出力があります。年間発電電力量に占める割合は約1.3%で、電力需給の調整力として重要な役割を担っています (※4)。

※2出典:経済産業省資源エネルギー庁|中小水力発電の開発における事業性評価に係る手引き 概要版
※3出典:資源エネルギー庁|日本の水力エネルギー量
※4出典:資源エネルギー庁|電力のピンチを救え!大活躍する『揚水発電』の役割とは?

第2章 水力発電の主なメリット5つ

水力発電には、他の再生可能エネルギーにはない強みがいくつもあります。ここでは代表的な5つのメリットを、データとともに紹介します。

2-1 出力が安定している

太陽光や風力は発電が天候に左右されます。水力発電は河川流量や貯水量の影響を受けるものの、太陽光や風力と比べて出力変動が小さく、安定した発電が可能です。

2-2 発電時のCO2排出が少ない

電力中央研究所の評価によると、水力発電(中規模ダム水路式)のライフサイクルCO2排出量は10.9g-CO2/kWhであり、石炭火力(942.7g-CO2/kWh)やLNG火力(473.5g-CO2/kWh)と比べて大幅に少ない水準です(※1)。太陽光発電(事業用、38.0〜58.6g-CO2/kWh)と比べても低い数値となっています。

2-3 純国産エネルギーで自給率向上に貢献

2023年度の日本のエネルギー自給率(IEAベース)は15.3%で、東日本大震災以降で最高の水準となりました(※2)。水力は国内の水資源を利用する再生可能エネルギーであり、燃料を海外から輸入する必要がないため、エネルギー自給率向上に貢献します。

2-4 揚水発電による調整力

揚水発電は起動から数分で系統に並列できるため、太陽光・風力など変動する電源を補う調整力として重要性が高まっています(※3)。

2-5 ダムの多目的利用

発電用ダムの多くは治水・利水も兼ねた多目的ダムであるため、洪水調節や農業用水・生活用水の確保にも役立っています。

※1出典:資源エネルギー庁|『CO2排出量』を考える上でおさえておきたい2つの視点(データ出所:電力中央研究所|日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価)
※2出典:経済産業省|令和5年度(2023年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(確報)
※3出典:資源エネルギー庁|電力のピンチを救え!大活躍する『揚水発電』の役割とは?

第3章 水力発電の主なデメリット5つ

一方で、水力発電にはコスト面や環境面で見過ごせない課題も存在します。ここでは主な5つのデメリットを整理します。

3-1 初期建設コストが高い

水力発電は出力規模によって大水力・中水力・小水力などに分類され、規模が小さいほど1kWhあたりのコストが割高になる傾向があります(注)。 資源エネルギー庁の試算(2030年時点)では、中水力の発電コストが10.9円/kWh、小水力は25.2円/kWhとなっており、太陽光(事業用)と比較すると発電コストが高くなる傾向があります(※1) 。特に小水力は資本費・運転維持費の負担が大きくなっています(※1)。

3-2 立地条件が限定的

資源エネルギー庁の調査では、2023年3月31日時点で技術的に開発可能な未開発地点は2,652地点、年間可能発電電力量は約457.3億kWhとされていますが、そのうち約78%(2,060地点)は中小水力規模で、山奥にあるなど開発コストが高額になりやすい地点が多いのが実情です(※2)。

3-3 生態系への影響

ダムは川の流れを分断し、魚類の遡上・降下を妨げます。水資源機構が管理する一庫ダムでは、ダムによる土砂供給量の変化などにより河床環境が変化し、アーマーコート化(河床表面の粗粒化)が進行しました。これに伴う河川環境への影響が確認され、環境改善の取り組みが進められています(※3) 。現在は魚道整備や環境改善の取り組みが行われています。

3-4 地域社会への影響

ダム建設に伴う住民移転や集落の水没など、地域社会への社会的コストが発生することがあります。

3-5 堆砂問題

国土交通省の調査によると、同省所管の575ダムのうち68ダム(令和5年度末時点)で計画堆砂量を超過しており、堆砂対策の実施・検討が進められています(※4)。

(注)水力発電の出力規模区分は文献により幅がありますが、本記事ではおおむね1,000kW未満を小水力、1,000〜10,000kW程度を中水力としています。

※1出典:公営電気事業経営者会議|中小水力発電4団体説明資料(資源エネルギー庁試算データ引用)
※2出典:経済産業省資源エネルギー庁|中小水力発電の開発における事業性評価に係る手引き
※3出典:水資源機構 一庫ダム管理所|環境改善の取り組み
※4出典:国土交通省|国土交通省所管ダムの堆砂状況について

第4章 太陽光・風力など他の再エネとの比較

水力発電のメリット・デメリットは、太陽光や風力といった他の再生可能エネルギーと比べるとどう違うのでしょうか。ここでは発電方式ごとの特徴を比較します。

4-1 メリット・デメリットの性質の違い

太陽光・風力のデメリットは天候による日々の出力変動という「運用面」に集中しているのに対し、水力のデメリットは建設時の高コストや生態系・地域社会への影響という「建設・構造面」に集中している点が特徴です。逆に、一度発電を始めれば水力は再エネの中でも出力の安定性に優れます。

4-2 発電方式ごとの特徴比較表

発電方式 出力安定性 主なデメリットの性質 ライフサイクルCO2
水力 高い 建設コスト・生態系影響 10.9g-CO2/kWh程度
太陽光 天候依存 出力変動・設置面積 38.0〜59.0g-CO2/kWh程度
風力 天候依存 出力変動・騒音 24.0〜26.5g-CO2/kWh程度

※出典:資源エネルギー庁|『CO2排出量』を考える上でおさえておきたい2つの視点(データ出所:電力中央研究所|日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価)

▼太陽光発電についてはこちら

▼風力発電についてはこちら

第5章 水力発電の今後の展望

水力発電の今後の展望

新規の大規模開発が難しくなるなか、水力発電にはどのような可能性が残されているのでしょうか。今後の展望を2つの視点から紹介します。

5-1 中小水力発電の可能性

農業用水路や上下水道など、既存インフラを活用した小水力発電は、新たな大規模ダム建設と比べて環境への影響を抑えやすく、地域資源を活用できる特徴があります(※)。

5-2 既存ダムの有効活用

発電に利用されていない既存の多目的ダムに新たに発電機を設置する取り組みも進められており、新規開発が難しくなるなかでの現実的な選択肢として注目されています。

※出典:資源エネルギー庁|中小水力発電について

第6章 水力発電についてよくある質問

Q1. 水力発電のメリットは何ですか?

A. 出力の安定性、発電時のCO2排出の少なさ、純国産エネルギーとして自給率向上に貢献できる点などが挙げられます。

Q2. 水力発電のデメリットは何ですか?

A. 初期建設コストの高さ、立地条件の限定、生態系や地域社会への影響、堆砂問題などが挙げられます。

Q3. 水力発電は環境に優しいのですか?

A. 発電時のCO2排出は少ないものの、建設・運用段階では生態系や河川環境への影響があるため、一概に「環境に優しい」と単純化せず、メリット・デメリット双方を理解することが大切です。

Q4. 日本で水力発電は増えているのですか?

A. 大規模水力の新規開発余地は限られていますが、中小水力の開発や既存ダムの発電設備増強などによる発電量の拡大が進められています。

Q5. 家庭で水力発電を利用することはできますか?

A. 一般家庭向けの小規模な水力発電製品は限られていますが、農業用水路などを活用した地域主体の小水力発電の事例は各地で増えています。

第7章 まとめ

水力発電は、出力の安定性やCO2排出の少なさ、エネルギー自給率への貢献など多くのメリットを持つ一方で、初期コストの高さや生態系・地域社会への影響、堆砂問題といったデメリットも抱えています。太陽光や風力とはデメリットの性質が異なり、単純な優劣ではなく、それぞれの発電方式の特性を理解した上で組み合わせていくことが重要です。今後は中小水力の開発や既存ダムの有効活用が、水力発電の可能性を広げる鍵となりそうです。

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