「冷蔵庫の奥から、しなびた野菜や期限の切れた牛乳が出てきた」。そんな場面は、どの家庭にも一度はあるのではないでしょうか。実は日本の家庭のフードロスで最も多いのは、食べ残しではなく、こうした「手つかず」の食品です。この記事では、国の最新データをもとに、日本全体と家庭のフードロスをトラックの台数に換算して紹介します。さらに、手つかずの食品が生まれる原因と、今日からできる3つの習慣も解説します。
【この記事でわかること】
- ・日本のフードロスの量(毎日トラック約1,260台分)
- ・家庭のフードロスで最も多い「手つかず」の食品とは何か
- ・手つかずの食品が生まれてしまう理由
- ・フードロスが家計・気候・世界の食料に与える影響
- ・手つかずの食品を減らす3つの習慣
第1章 フードロスとは?「食品ロス」や「ゼロウェイスト」との違い
フードロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。農林水産省は、これを「食品ロス」と呼んでいます(※1)。
この記事では、「フードロス」と「食品ロス」を同じ意味で使用します。なお、国の統計や資料では「食品ロス」という用語が使われているため、記事内の数値も「食品ロス」として公表されたデータに基づいています。
また、似た言葉に「ゼロウェイスト」があります。こちらは、食べ物に限らず、身の回りのごみ全体をできるだけ出さないようにしようという考え方です。
このように、フードロスは、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食べ物」そのものを指すのに対し、ゼロウェイストは、ごみを出さないようにしようという「考え方」を指しています。フードロスを減らすことは、ゼロウェイストの考え方を暮らしの中で実践する方法の1つといえます。
なお、国連は2022年に、毎年3月30日を「国際ゼロウェイストデー」と定めました(※2)。この日を紹介する国連のページでも、食品ロスは大きなテーマとして取り上げられています。
※出典1:農林水産省「食品ロスとは」
※出典2:国際連合「International Day of Zero Waste(国際ゼロウェイストデー)」
第2章 日本のフードロスは年461万t、毎日トラック約1,260台分
2024年度に日本で出たフードロスは、約461万tでした(※1)。数字が大きすぎて、どのくらいの量なのか想像しにくいかもしれません。
そこで、1日あたりの量に直してみます。461万tを365日で割ると、1日あたり約1万2,600tです。10トン積みのトラックに載せると、毎日約1,260台分の食べ物が捨てられている計算になります。
2-1 家庭と事業者から、ほぼ半分ずつ出ている
では、このフードロスはどこから出ているのでしょうか。国の推計では、家庭から約224万t、食品をつくる・運ぶ・売る・提供する事業者から約237万tが出ています(※1)。家庭と事業者で、ほぼ半分ずつです。
発生元ごとに、1日あたりのトラックの台数に置き換えると、次のようになります。
| 発生元 | 1年間のフードロス(2024年度) | 1日あたりのトラックの台数 (10トン積み) |
|---|---|---|
| 家庭 | 約224万t | 約610台 |
| 食品製造業 (食品をつくる工場など) |
約110万t | 約300台 |
| 外食産業(飲食店) | 約70万t | 約190台 |
| 食品小売業(スーパーなど) | 約48万t | 約130台 |
| 食品卸売業(問屋など) | 約9万t | 約25台 |
| 合計 | 約461万t | 約1,260台 |
表の重さは、環境省・農林水産省の推計値です(※1)。トラックの台数は、1年間の量を365日で割り、10トン積みのトラックに換算した編集部の試算です。
家庭だけでも、毎日トラック約610台分。1つの発生元としては、家庭が最も多いことがわかります。
2-2 飲食店からは毎日トラック約190台分。外食のフードロスは2年続けて増加
飲食店(外食産業)から出るフードロスは、2024年度で約70万tです(※1)。1日あたりにすると約1,900t、10トン積みのトラックで毎日約190台分にあたります。
外食のフードロスは、2022年度の約60万tから、2023年度に約66万t、2024年度に約70万tと、2年続けて増えました(※1)。2019年度の約103万tと比べれば少ない水準ですが、外食産業のフードロスは2年続けて増加しています。
※出典1:環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」別添資料
第3章 家庭のフードロスの4割は「手つかず」
ここからは、1つの発生元として最も多い家庭のフードロスを詳しく見ていきます。家庭のフードロスは、捨てられ方によって次の3つに分けられています(※1)。
- 手つかず(直接廃棄):買ったまま使われずに捨てられた食品
- 食べ残し:料理として出したものの、食べきれずに捨てた食品
- 過剰除去:野菜の皮を厚くむきすぎるなど、食べられる部分まで捨てたもの
3つのうち、最も多いのが「手つかず」の食品です。
3-1 食べ残しより多い「手つかず」の食品(毎日トラック約260台分)
2024年度の家庭のフードロス約224万tのうち、手つかずの食品は約96万tで、全体の43%を占めます(※1)。食べ残しの約93万t(41%)をわずかに上回り、3つの中で最も多い量です。
約96万tを1日あたりに直すと、約2,600t。全国の家庭から、10トン積みのトラック約260台分の手つかずの食品が、毎日捨てられている計算です。
手つかずの食品は、2019年度の約107万tから2024年度の約96万tへと、少しずつ減ってきています(※1)。とはいえ、今も家庭のフードロスの中で最も大きな割合を占めています。
3-2 手つかずで捨てられやすいのは、野菜・果物・牛乳
では、どんな食品が手つかずのまま捨てられているのでしょうか。
環境省の手引きでは、仙台市が家庭に「食品ロスダイアリー」(捨てた食品を記録する日記)をつけてもらった調査が紹介されています。この調査では、手つかずで捨てられた食品のうち、生鮮野菜が45.0%と半分近くを占めました(※2)。続いて生鮮果物が13.3%、牛乳・乳製品が6.1%です(※2)。
野菜・果物・牛乳に共通するのは、冷蔵庫に入れていても傷みやすい点です。お菓子や缶詰のように日持ちする食品と比べて、少し使い忘れているうちに食べられなくなりやすい食品といえます。
3-3 「残さず食べる」は94%。それでも手つかずの食品が出てしまう理由
2024年に環境省が全国の2,000人に行った調査では、「残さずに食べる」を実践している人は94%でした(※2)。食べ物を大切にする気持ちは、すでに多くの人が持っています。
一方で、「買い物をする前に冷蔵庫などの在庫チェックを行う」人は73%、「冷蔵庫を奥まで見えるように整理する」人は67%でした(※2)。食べ残さないことと、買った食品を使い切ることは、それぞれ別の行動だとわかります。
先ほどの仙台市の調査では、手つかずの食品を捨てた理由として「品質の劣化」が62.5%、「期限が切れた」が24.4%を占めました(※2)。この調査からは、買った食品を使い切れず、傷んだり期限が切れたりして捨ててしまうケースが多いことがわかります。
さらに、手つかずの食品を多く捨てていた家庭には、買い物のしかたに次のような傾向が見られました
- 念のためと思って、食品を多めに買う
- 買い物をしながら献立を考える
- 家にある食品と同じものを、うっかり買ってしまう
- 冷蔵庫や食品の保管場所を、定期的に整理することがほとんどない
どれも、忙しい毎日の中で自然に起きる行動です。実際、こうした家庭では、主に料理をする人がフルタイムで働いている傾向も見られました。
この調査では、手つかずの食品を多く捨てていた約24%の家庭から、手つかずの食品の重さの約57%が出ていました(※2)。裏を返せば、買い物と冷蔵庫の使い方を少し変えるだけで、大きく減らせる余地があるということです。
※出典1:環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」別添資料
※出典2:環境省「消費者の行動変容等による食品ロスの効果的な削減に向けた手引き(資料編)」令和8年3月更新版
第4章 フードロスは「もったいない」だけでは終わらない
食べ物を捨てると、「もったいない」と感じる方は多いでしょう。ただ、フードロスが生む損失は、捨てた食べ物そのものだけではありません。お金、気候、世界の食料の3つの面にも影響が広がっています。
4-1 経済損失は年3.8兆円(国民1人あたり約3.1万円)
消費者庁などの推計では、2024年度のフードロスによる経済損失は約3.8兆円です(※1)。国民1人あたりにすると、年間3万1,097円にあたります(※1)。
この金額は、家庭と事業者の両方の損失を合わせたものです。そのため、1人ひとりの家計から毎年3万円が出ていくという意味ではありません。それでも、食べられるはずだった食べ物に、それだけのお金が使われていたことになります。
4-2 温室効果ガスは世界の排出量の8〜10%、航空業界の約5倍
食べ物は、育てる・運ぶ・加工する・保存する・捨てる、それぞれの段階でエネルギーを使い、温室効果ガスを出します。捨てられる食べ物は、こうした排出がすべて無駄になってしまいます。
日本では、フードロスによる温室効果ガスの排出量は年間約978万t(CO2換算)と推計されています(※1)。世界に目を向けると、フードロスと食品廃棄による排出は、世界の温室効果ガス排出量の8〜10%を占めます。これは、世界中の航空業界が出す量のほぼ5倍です(※2)。
温室効果ガスの種類や、それぞれが温暖化に与える影響は、以下の記事で詳しく紹介しています。
捨てられた食べ物を含む生ごみが、環境にどんな影響を与えるのかは、以下の記事で解説しています。
4-3 世界の家庭では毎日10億食分以上が捨てられている
国連環境計画(UNEP)によると、2022年に世界で捨てられた食品は約10億5,000万tにのぼります。そのうち60%は家庭から出ています。
UNEPは、世界の家庭で毎日10億食分以上の食べ物が捨てられていると推計しています。その一方で、同じ2022年には、世界で7億8,300万人が飢餓の影響を受けていました(※2)。食べ物が余って捨てられる場所と、食べ物が足りない場所が、同じ時代に存在しているのです。
※出典1:消費者庁「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」別添2 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果
※出典2:国連環境計画(UNEP)「World squanders over 1 billion meals a day - UN report」(Food Waste Index Report 2024)
第5章 手つかずの食品を減らす3つの習慣
ここまで見てきたように、家庭のフードロスで最も多いのは手つかずの食品でした。手つかずの食品を減らすには、「もったいないと思う気持ち」よりも、買いすぎと使い忘れを防ぐ小さな仕組みが効果的です。ここでは、研究や国の資料で裏付けのある3つの習慣を紹介します。
5-1 買い物の前に、冷蔵庫の中をスマホで撮る
1つ目は、出かける前に冷蔵庫の中をスマホで撮っておく習慣です。買い物中に写真を見返せば、家にあるものと同じ食品をうっかり買うことを防げます。
京都府立大学の研究では、119世帯を対象に、冷蔵庫の中を撮影する方法を試してもらいました。その結果、1週間あたりの家庭のフードロスが43%減ったと報告されています。食品管理アプリを使った方法でも29%減っており、どちらも効果が長続きすることが確認されました(※1)。
写真は1枚撮るだけなので、今日の買い物からすぐに試せます。
5-2 「早く使う食品」の置き場所を決める
2つ目は、冷蔵庫の中に「早く使う食品」の置き場所を決めておく習慣です。傷みかけの野菜や、開けかけの牛乳などをそこにまとめておけば、奥にしまい込んで忘れることを防げます。
同じ研究では、すぐ食べる食品を入れるケースや、マスキングテープでのエリア分けといった冷蔵庫の整理グッズも試されました。この方法では、1週間あたりのフードロスが51%減ったと報告されています(※1)。
研究で家庭にお願いした手順は、次の3つのステップです。
- チェック:冷蔵庫の中を見て、早く使う必要のある食品を見つける
- 動かす:見つけた食品を、すぐ目につく場所に動かす
- 早く使う:その食品を優先して料理に使う
ケースを1つ用意するだけでも、「チェック→動かす」が習慣になりやすくなります。
5-3 賞味期限が過ぎた食品を、すぐには捨てない
3つ目は、賞味期限が過ぎた食品を、すぐには捨てないことです。手つかずの食品を捨てた理由の約4分の1は「期限が切れた」でした(※2)。
消費者庁のガイドラインでは、2つの期限を次のように説明しています(※3)。
| 期限の種類 | 意味 | 表示される主な食品 | 期限を過ぎたら |
|---|---|---|---|
| 消費期限 | 食べても安全な期限 | 弁当、調理パン、そうざい、生菓子類、生めん類など | 食べないようにする |
| 賞味期限 | おいしく食べることができる期限 | スナック菓子、即席めん類、缶詰など | 必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない |
このうち、賞味期限は、品質が保てる期間よりも短めに設定されるのが一般的です。メーカーなどは、試験で確かめた「品質が保てる期間」に1より小さい数(安全係数)をかけるなどして、ゆとりをもった日付を表示しています(※3)。
つまり、賞味期限の日付が過ぎた食品でも、すぐに捨てる必要があるとは限りません。期限が切れたことだけを理由に捨てていた食品があれば、保存状態などを確認したうえで、食べられるか判断してみてください。ただしこれは未開封で、表示された方法どおりに保存していた場合です。開封後の食品は、賞味期限にかかわらず早めに食べきることが大切です。
※出典1:環境省「消費者の行動変容等による食品ロスの効果的な削減に向けた手引き(資料編)」令和8年3月更新版(山川肇・京都府立大学「ICT等を活用した家庭系食品ロス削減施策の発生抑制効果に関する研究」)
※出典2:環境省「消費者の行動変容等による食品ロスの効果的な削減に向けた手引き(資料編)」令和8年3月更新版(仙台市の食品ロスダイアリー調査)
※出典3:消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」令和7年3月
第6章 よくある質問
Q1. 日本のフードロスは減っている?
A. 減っています。日本のフードロスは、2012年度の約643万tから、2024年度には約461万tまで減りました。家庭のフードロスには、2000年度の約433万tを、2030年度までに半分の約216万tにする目標があります。2024年度時点では、2000年度と比べて約48.3%減少しています(※1)。
Q2. 賞味期限が切れた食品は食べても大丈夫?
A. 賞味期限は「おいしく食べることができる期限」で、過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありません。一方、消費期限は「食べても安全な期限」なので、過ぎた食品は食べないようにしてください(※2)。どちらも、開封前に表示どおりの方法で保存した場合の期限です。
Q3. フードロスは家庭と事業者、どちらから多く出ている?
A. 2024年度は、家庭から約224万t、事業者から約237万tで、ほぼ半分ずつです。事業者を業種別に見ると、食品製造業が約110万t、飲食店などの外食産業が約70万tです(※1)。1つの発生元としては、家庭が最も多くなっています。
Q4. 1人あたり、どれくらいの食べ物を捨てている?
A. 2024年度のフードロスを国民1人あたりにすると、年間約37kgです(※3)。1日あたりにすると、およそ100gの食べ物を捨てている計算になります。
Q5. フードロスが多いのは豊かな国だけ?
A. 豊かな国だけの問題ではありません。UNEPの報告書は、所得の水準で国を3つのグループに分けて比べています。その結果、家庭から出る1人あたりの食品廃棄量の差は、7kgしかありませんでした(※4)。所得の水準にかかわらず、世界中の家庭で食べ物が捨てられています。
※出典1:環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」別添資料
※出典2:消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」令和7年3月
※出典3:消費者庁「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」別添2
※出典4:国連環境計画(UNEP)「World squanders over 1 billion meals a day - UN report」(Food Waste Index Report 2024)
第7章 まとめ
日本では、毎日トラック約1,260台分の食べ物が捨てられています。そのうち家庭のフードロスで最も多いのは、食べ残しではなく、買ったまま使われずに捨てられる「手つかず」の食品でした。全国の家庭を合わせると、その量は毎日トラック約260台分にのぼります。
手つかずの食品の多くは、使うつもりで買ったものが、気づかないうちに傷んだり期限が切れたりして捨てられています。だからこそ、次の3つの小さな習慣が効果を発揮します。
- 買い物の前に、冷蔵庫の中をスマホで撮る
- 「早く使う食品」の置き場所を決める
- 賞味期限が過ぎた食品を、すぐには捨てない
家庭のフードロスは、2012年度の約312万tから2024年度の約224万tへと、およそ3割減っています(※)。1つひとつの家庭の工夫が積み重なった結果です。まずは次の買い物の前に、冷蔵庫の中を1枚撮るところから始めてみてください。
フードロスの削減は、SDGs(持続可能な開発目標)のテーマの1つでもあります。SDGsと環境問題の関係は、以下の記事でわかりやすく解説しています。



